首都移転チームの部屋は活気にあふれていた。

 若い官僚たちは真剣な表情でキーボードを叩き、受話器を耳に当てている。電話がひっきりなしに鳴り、対応の声が飛び交っていた。彼らも自分たちの仕事に意義と現実感を感じ始めているのだ。

 森嶋のデスクに置いた携帯電話が震えだした。

 ディスプレイの表示は理沙だ。

 優美子のほうを横目で見ると、彼女はパソコンを睨みながら電話の対応をしている。

 森嶋は通話ボタンを押した。

〈森嶋君、インターナショナル・リンクの会見が延期になったわよ。これでしばらくは日本も生きのびられるかも知れない。あなたが日本の破綻を救ったというわけね〉

 理沙の多少興奮した声が飛び込んでくる。

「そんな大それたことはやってませんよ。模型を見せただけです」

〈素直に喜びなさいよ。誉めてあげてるんだから。でも実際、かなりインパクトがあったわよ。もしあれが本当の話ならね〉

「ウソだというんですか。もう動き出してると聞いています」

〈正直、よくダラスが信じたと思ってる。私には役者がちょっと物足りなかった。あの長谷川っていう建築家、よほどダラスのお気に入りなのね〉

「インターナショナル・リンクの会見中止は、すでに公式発表済みなんですか」

〈中止じゃない。延期よ。インターナショナル・リンクが銀行格付けを再考しているのか、日本政府に時間を与えようと思ったのか分からないわよ。でも日本の首都移転なんて、ダラスにとっても、興味しんしんなのはたしかよ〉

「彼は日本に必要なのは、変わろうとする意識だと言ってました。それを示せば国債の格付けにも再考の意思があると」

〈首都移転なんて、まさに政府のチェンジの意識を強くアピールしてる。公式発表はいつなの。教えてくれないのなら、模型見物の体験記を書くわよ。実名入りで。私にはその権利があると思ってるんだから。あなたと別れて、大変だったのよ。デスクは私を無責任で、無能な記者だと罵倒した。それに対して私は何の反論も出来なかった〉