このほかにも、眼球には異常がなくとも、視覚に不調を来す病気は多々あるが、診断できる神経眼科医は、日本に1万4000人いる眼科医の中に200人いるかいないかの少数派で、社会的関心も低いのが現状だ。

「一般の眼科医は眼球医で、視覚全体を診ようとはしません。目は快適でなければいけないのに。

 例えば健常者であれば、歩くのに足のことを意識したり、何か作業するときに、手のことを意識したりはしませんよね。

 同じように、ものを見る際にも、目のことを意識しないで、自然に見えていなければ快適じゃないわけです。だけど自分が快適に見えているのかどうかなんて、普通の人は考えない。

 いったん不快になったら、こんなに不便なことはないのに。見えることは、人間の生活には欠かせない機能の1つです。

 ある新聞社の人が言っていました。新聞の健康欄に、一番多く質問が寄せられるのは、目のことなんだそうです。

 生死には関係ないけど、最も身近で、最も不具合が影響するのが目や視覚なんですね」

 それほど大切な機能であるにもかかわらず、眼科を受診しても相手にされず、どうしたらいいか困っている人は、実は物凄く多いのではないだろうか。読者の周囲にも、きっといるに違いない。

◎若倉雅登(わかくら・まさと)
井上眼科病院(東京・千代田区)名誉院長
1949年東京生まれ。北里大学大学院医学研究科博士課程修了。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学助教授、井上眼科病院副院長を経て、2002年から同病院院長。12年4月から現職。日本神経眼科学会理事長、東京大学医学部非常勤講師、北里大学医学部客員教授などを歴任し、15年4月にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ副理事長に就任。『医者で苦労する人、しない人――心療眼科医が本音で伝える患者学』『絶望からはじまる患者力』(以上春秋社)、『心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因』(集英社)、医療小説『蓮華谷話譚(れんげだにわたん)』(青志社)など著書多数。専門は、神経眼科、心療眼科。予約数を制限して1人あたりの診療時間を確保する特別外来を週前半に担当し、週後半には講演・著作活動のほか、NPO法人、患者会などでのボランティア活動に取り組んでいる。