銀行合併や観光立国を
いち早く提言した

 例えば、アトキンソン氏の名を一躍世に轟かせたのが、1998年にゴールドマンサックスが出した邦銀についてのレポートだ。当時、19の主要銀行が群雄割拠する中で、アトキンソン氏は世界の主要銀行のシステム投資額に着目して分析し、「日本に主要銀行は、2~4行しか必要ない」というレポートを出した。

 当然、各行の頭取たちは「我々に死ねということか」と怒り狂う。著名な経済評論家やアナリストたちも「現実的な話ではない」とボロカスだった。が、この分析が正しかったことはその後、吸収合併を経た銀行業界の今が雄弁に物語っている。ちなみに、アトキンソン氏のレポートをこき下ろした専門家は、「そんなことありましたっけ?」という顔をして、今日も立派な論評をされている。

 また、今や猫も杓子もインバウンドという感じになっている「観光産業」もしかりだ。

 アトキンソン氏は今から5年前の2014年秋に出した著書で、日本はこれまで観光産業にしっかり取り組んできたとは言い難い「観光途上国」なので、逆にここに成長の大きな伸び代があるとして、日本政府としても推進していくべきだと提言した。が、この時も「観光なんかよりも、日本が世界に誇る技術力を伸ばすべき!」「外国人観光客が来たら治安が悪くなって日本はおしまいだ!」なんて感じで批判的な意見も多かったのである。

 しかし、結果はどうだろう。2014年に1300万人だった訪日外国人観光客は18年に3100万人と急増。景気の悪い話ばかりの日本経済の中で、「観光」は唯一右肩上がりで成長している「希望の産業」となっている。

 このような「慧眼」で知られる、アトキンソン氏が観光と同じく5年前から、日本経済再生の処方箋として提言し続けてきたのが「継続的な賃上げ」だ。

 そして、先日発売された新著「国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか」(講談社α新書)のなかで、なぜ日本が賃上げができず、ここまで低い生産性になってしまったのかということを徹底的に要因分析をしたところ、「1964年」を境に日本経済がおかしな方向へ進み、後の「失われた20年」につながっていることがわかったと述べている。