今回のストックホルム協議の日程を明かしたのは北朝鮮だったが、これも、北朝鮮側に思惑があったからだろう。

 米国はあくまでも予備協議という位置づけだったから、日程を明らかにしなかったとみられるが、北朝鮮は、日程を明らかにすることで、関係国政府やメディアの関心を集め、そこで自らの立場を主張することを狙ったのだろう。

 金明吉氏がストックホルムからの帰途、記者団に積極的に口を開いたのも、同じ思惑から出た行動といえる。北朝鮮では平壌からの「宣伝扇動活動を行え」という指示がなくては、当局者は記者団に自由にコメントすることを許されていないからだ。

戦略の転換読めなかった米国
ミサイル試射の予測はずれる

 だが、米国はこうした北朝鮮の戦略の転換を読み切れていなかったようだ。

 そのことは北朝鮮が10月2日朝に発射した潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)の実験に対する対応に現れていた。

 北朝鮮は東部・江原道元山沖に、バージ船で運んだ発射台を沈め、そこからSLBMを発射したとみられる。労働新聞が3日に公開した現場写真にもバージ船が写っていた。

 日本政府関係者によれば、日米韓の情報当局は少し前からこのバージ船などの動きを把握していた。北朝鮮が「北極星3」と名付けた新型SLBMを開発しているという情報も入手していたという。

 だが、北朝鮮が、崔善姫第一外務次官の9月9日付声明で、9月下旬ごろに米朝実務協議を行うと発表していたため、日米韓は「SLBMの試射は、早くても米朝実務協議の後になる」という予測を立てていた。

 実際、過去の北朝鮮弾道ミサイル試射の際に日本海などで活動していた、米ミサイル追跡艦「ハワード・O・ローレンツェン」は10月2日の時点で、日本海ではなく九州南方の海域にいたという。

成果と誇るトランプ氏に反発
強硬路線には戻らないとの読み

 韓国政府元高官は、SLBM発射について「トランプ大統領を苦しめるのが目的だった」と語る。

 トランプ大統領は繰り返し、北朝鮮が、シンガポール首脳会談以降、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を中断したことを、自身最大の外向成果だと宣伝してきた。