この経営戦略はうまく期待通りの結果をもたらした。2015年には中国でIT先端技術を駆使した産業振興策である「中国製造2025」が打ち出された。2016年まで世界全体でスマートフォンの販売は伸びた。 その上、ビッグデータの収集や分析のための“データセンター”への投資も増えた。半導体需要は大きく持ち直し、“スーパーサイクル到来”といわれるほどの活況を呈した。

 サムスン電子は、市況悪化局面で積極的に投資を積み増したことによって、市況反転の恩恵を取り込んだ。それが、同社の半導体事業の成長を支えた。

 足元、サムスン電子は市況の悪化にもかかわらず、半導体生産能力を増強している。自社の業績が悪化傾向にあり、ライバル各社が生産能力の調整を重視する一方、サムスン電子はこれまでの逆張りの発想で市況の反転に備えたいと考えている。

 しかし、今後の世界経済の展開を予想すると、半導体関連市況は厳しさを増す可能性は否定できない。なぜなら、世界経済を支えている米国経済が2年以内に景気後退に陥る恐れがあると警戒する経済の専門家も増えているからだ。現時点で、サムスン電子がこれまでの発想に基づく経営戦略を踏襲することが有利に働くとは、必ずしも断定できない。

今後中核となる
新事業育成への懸念

 サムスン電子を取り囲む経営状況は、一段と厳しさを増すことが考えられる。同社にとって最も重要なポイントは、半導体・スマホに代わる新しい収益の柱となる事業を育成できるか否かだ。

 現在、サムスン電子はさまざまな分野で半導体に代わり得る新しいビジネスを育成しようとしている。5G通信やAI(人工知能)に対応したプロセッサ、バイオテクノロジーなど、その取り組みは多岐にわたる。