ただ、いずれの分野でもライバル企業がかなり先行している。すでに5GやAIの分野では、アマゾンなどの米国勢やファーウェイ、ZTEなどの中国勢の台頭が顕著だ。ファーウェイは米国製の部品を使わない5G基地局の生産にも着手し、攻勢を強めている。ファーウェイは5G対応スマホや次世代のスマホ向けICチップの生産でも先行している。5G分野ではエリクソンやノキアのシェアも高い。

 サムスン電子は、バイオ医薬品事業にも注力している。この分野では世界の大手製薬会社が新薬、およびその候補を持つ企業の買収を繰り返し、寡占化が進んでいる。その中で、後発のサムスン電子が競争優位性を確保し、高めることは口で言うほど容易なことではない。

 当面、サムスン電子が新しい稼ぎ頭を手に入れることは容易ではないだろう。また、同社は、ヒト・モノ・カネの面でわが国に依存してきた。

 極論すれば、サムスン電子は先行企業の製品を模倣し、大量生産を強みにして価格競争を仕掛けることで成長してきた。

 今後、AIの活用などによって世界経済が急速かつ大規模に変化していく可能性がある。すでに中国ではBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)のような革新的な企業が新しいテクノロジーを創出している。

 サムスン電子がこうした企業のように、新しい取り組みを従来以上のエネルギーを持って進め、成長を目指し、実現できるかが問題だ。

 現状、サムスン電子は半導体事業の強化によってさらなる成長を目指しているが、不確実性高まる世界経済の中でその戦略が吉と出るか、凶と出るかは一段と読みづらくなっている。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)