名実ともに海外が稼ぎ頭に――。3期連続で過去最高益を達成したファーストリテイリングで、海外ユニクロ事業の躍進が止まらない。売上高が1兆円を突破し、営業利益でも初めて国内ユニクロ事業を抜いた。グローバルナンバーワンのアパレル企業を掲げてきた柳井正会長兼社長の野望が現実味を帯びる一方で、国内ユニクロ事業の地位は低下している。(ダイヤモンド編集部 大矢博之)
海外ユニクロ事業の売上高1兆円突破
営業利益も国内を上回る
「僭越ですが、世界で受け入れられていると思った――」。
10月10日、東京都内で開催されたファーストリテイリングの2019年8月期決算会見。柳井正会長兼社長は不敵な笑みを浮かべながらこう語った。
昨年の暖冬による売り上げ減や、日韓関係の悪化がもたらした不買運動などマイナス要素があったとはいえ、ファストリの足元の業績は好調だ。19年8月期の売上高は前年同期から7.5%増の2兆2905億円。純利益は5.0%増の1625億円で、3期連続で過去最高益を達成した。
今期もこの勢いのまま成長を加速させる方針で、20年8月期の業績見通しは売上高2兆4000億円、純利益1750億円と、4期連続で最高益更新の目標を掲げる。
好調の原動力は、海外ユニクロ事業だ。これまでファストリは、国内ユニクロ事業で稼ぎながら海外での出店を地道に続けてきた。海外のユニクロ店舗数が国内を上回ったのは16年8月期のことだ。そして18年8月期には、売上高で海外ユニクロ事業が国内を抜いた。
19年8月期も海外ユニクロ事業の伸びは止まらず、売上高は14.5%増の1兆260億円。国内単体では届かなかった売上高1兆円の大台に初めて乗せた。加えて、営業利益も16.8%増の1389億円で国内ユニクロ事業の1024億円を超え、名実共に海外が稼ぎ頭になったのだ。
海外ユニクロ事業の営業利益が国内を上回ったことについて、柳井会長は、「やっぱり超えたなという感じ。いよいよ世界に出ていくことが始まるなという実感を持った」と淡々と語った。
「2020年にグローバルでナンバーワンのアパレル企業になる。売上高の8割は海外で叩き出す」――。
かつて柳井会長はこんな目標を掲げていた。ZARA擁する世界ナンバーワンのスペイン、インディテックスの背中はまだ遠く、2020年という目標達成は難しそうだが、海外で稼ぐグローバル企業という柳井会長の野望にまた一歩近づいた。