台風前からてんやわんや
鉄道マンのハードな日々

 本格的な計画運休は、2014年の台風19号の際にJR西日本が初めて実施した。しかし、それ以前も自然災害に備えて、一部区間において事前の運休計画を予め決定していた鉄道会社は多い。かくいう私も、鉄道会社で現役の指令員として勤務していた際、翌日の台風に備えて運転整理の準備を行っていた経験を持つ。

 言わずもがな、ある程度の予測を立てて、数日前から対策を練り始め、前日の運行終了後も翌日以降の運転再開に備える。もちろん夜通し台風情報や運転規制の基準となる雨量計・風速計の様子を見ながら、運行前の点検列車のダイヤを検討したり、各関係部署とのやりとりを行う。人身事故や地震など突発的な異常事態と違って、台風は予め備えることができる災害だ。過去の事例と、気象庁から出される情報を頼りに対策を講じるのだ。

 しかし、たとえ綿密な運転再開後の計画を組んでいたとしても、全てをその通りに動かすことは至難の技。なにせ、相手は自然というコントロール不可能な相手だ。強風による設備・車両故障やけが人の発生など、いつ・どこで異常自体が発生するか、外的要因に大きく左右されることも少なくはない。

 そしていざ再開ともなれば、駅・乗務員・土木・車両・本社部門・マスコミ…あらゆる方面からの電話・無線が鳴り止むことはなく、まさに火事場といっても過言ではない。その合間を縫って指令員は運転整理、運用関係部署へ指示を出している。極端な話、台風が直撃している最中というのは、意外なことに全線が運休している分、鉄道現場は比較的落ち着いているのだ。そして台風一過から、本当の修羅場が始まる。

 本来、余裕を持って丸1日運休などの大きな決断をすることができれば、運行側としてはゆとりを持って対応できるのだろうが、反対に事情を知らない多くの利用客が、早期運転再開を望むことも十分理解はできる。しかし、急がば回れで、大前提である「安全」が担保されて、初めて輸送が提供できるのが鉄道の宿命である。