9月4日、近畿や四国地方で猛威を振るった台風21号が上陸した際、JR西日本や私鉄が行った「計画運休」の評価が高まっている。4年前、JR西日本が初めて行った際には批判もあった計画運休。しかし、予測可能な天災から乗客を守る手法としては、非常に重要である。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

JR西は運休で私鉄は平常通り!
初の「計画運休」は空振りだった…

JR西日本が実施する「計画運休」JR西日本が4年前から実施している「計画運休」は、他社にも広がりつつある。空振りに終わることもあるが、乗客に被害が及んでからでは遅いのだ Photo:Akiko Onodera

 9月4日、「今年最強」の台風21号が上陸し、大きな被害を出した近畿地方。関西空港が閉鎖され、利用客が空港内で一夜を明かす様子が報じられる中、乗客の混乱を未然に食い止めたJR西日本や関西私鉄の「英断」を評価する声が相次いだ。「計画運休」である。

 計画運休とは「台風接近など列車の運行に影響が予想される場合に、風速や雨量が規制値に達する前に運転を取りやめることで、安全の確保と混乱の防止を図る」というものだ。今回のケースでも、台風上陸の前日に通告し、実際に4日の正午過ぎから全線で運休した。

 しかし2014年、JR西日本が日本で初めて実施した計画運休は、なんと「空振り」だった。この年の10月、太平洋上で発生した台風19号は、中心気圧900hPa、最大風速60m/sの猛烈な勢力に急成長しながら北上。12日には950hPaの強い勢力を保ったまま沖縄本島を通過した。2ヵ月前の8月には、記録的集中豪雨によって広島市北部で大規模な土砂被害が発生して77人が死亡する惨事が起きたばかり。避難勧告の遅れなど災害への備えが大きく議論されていた。

 こうした状況をふまえてJR西日本は「台風が接近した場合、全面的に運行を取りやめる」と予告し、不要不急の外出をしないよう呼びかけた。実際に翌13日、16時頃から京阪神地区の全線を運休させ、駅を閉鎖した。

 2014年の台風19号は全国で死者3人、負傷者94人、大阪・兵庫を中心に200棟以上の浸水など、決して小さくはない被害をもたらした。しかし関西圏の雨量、風速は予想ほどではなく、JR西日本が予告通りに全面運休した一方、並行して走っている阪急や京阪電鉄は、ほとんど遅れや運休なく運転を継続していたのである。

 当時の新聞記事は「対応に賛否」と伝え、安全の最優先には理解を示しつつも、「動ける限り運転してほしかった」「帰宅できなくなるほうが困る」など、通勤者の戸惑いの声を中心に紹介している。