サウジ石油施設攻撃も
原油相場上昇は一時的
原油相場の膠着状態が続いている。
この膠着から抜け出す相場材料がなかったわけではない。9月14日にサウジアラビア国内にある石油生産施設が攻撃・破壊されたことで、原油価格がこれまでの価格帯から上方シフトするのではないかとの警戒感が強まった。
この攻撃で失われるとされた生産量は日量570万バレルとのことだったが、これは日本の石油消費量が日量ベースでおおよそ400万バレルであることと比較すれば、いかに大きな数字かがわかる。また、日本は原油輸入の約4割をサウジアラビアに頼っており、今回の攻撃により石油の出荷が停止する事態になれば、市民生活に多大な悪影響が出ることが容易に想像できる。
さらに、サウジアラビア産原油の70%程度は日本を含むアジア向けに輸出されていることから、世界経済への影響を及ぼす原因となり得るなど、看過が許されない重大事案だった。それ故原油相場は上昇したが、一時的な上昇に留まった。
「原油価格は短時間で20%上昇」と報じられていたが、ブレント原油先物はバレル当たり71.95ドルが今回の高値であるように、驚くほどの水準には至らなかったというのが実際のところだ。もう少し詳細まで踏み込めば、60ドル/バレルから確かに20%ほど上昇して72ドル弱まで一時的に上昇した。しかし、この価格帯を持続することはできなかったどころか、ブレント原油の先物は事件発生前の水準を割り込んでしまっている。
20%の上昇は、今回との関係に限って言えば「問題の本質」による値動きではない。これは原油価格下落に掛けていたプレイヤーがポジションを保有したまま週末を迎え、このイベントによってアジア時間の寄付き、つまり東京の朝一でポジション手仕舞いを強いられることになっただけだった。
より具体的にはロスカット注文の執行が集中したのだが、ロスカットはリスク拡大を回避するための注文なのでまずは執行優先され、価格の優先順位はその次となる。市場が通常のコンディションであれば、たとえば、1万バレルのロスカット執行のために10セント必要とするところ、コンディションが悪い今回のケースでは寄付きは当然高値となり、数十セント、数ドル必要とするほど市場に厚みがない、薄い状態だった模様だ。