世界景気が減速する中、原油価格は下落傾向にある。一方、株価は上昇傾向にあり、原油価格との乖離が広がっている。原油価格と株価の推移には関連性がある。今後の原油価格の動向次第で、株価が大きく下落する可能性がある。
景気循環系商品の価格は景気減速で下落
今年の商品相場について、弊社は当初より下記のように予想していた。
「循環的な景気減速を回避するため、世界的な金融緩和が相場を支える。だが、米国の減税効果が一巡することで、秋口から年末にかけて景気循環系商品が売られるだろう」
今のところ、予想通りの展開となっており、マクロ経済の方向性に大きな変更はない。
だが、当初の見通しと異なる点も出てきた。米国経済が想定よりも減速しておらず、その一方で欧州や中国の景気が想定以上に減速していることだ。
米国経済の減速が遅れている大きな理由は、トランプ大統領がFRB(米連邦準備理事会)に対して金融緩和を強制し、長期金利が安定したことの影響が大きいと見られる。とはいえ、金融緩和により金融政策の自由度が奪われるため、今後のリスクであることは変わりない。
欧州の景気減速は2017年後半からすでに始まっていた。背景には、ECB(欧州中央銀行)の金融緩和策が限界にきていることや、財政基準(財政赤字はGDPの3%以下)の厳しさから景気刺激のための公共投資ができないことなどがあった。
さらに加えて、英国のEU離脱という大きなイベントが重なったため、歴史的な景気減速となっている。欧州の景気回復は、循環的には今年の後半と思われたが、恐らく来年以降に持ち越されるだろう。11月からはECB、EUともにトップが交代するが、特にECBでは、ドラギ総裁が緩和一辺倒だったので、後任のIMFラガルド専務理事は非常に難しい政策運営を迫られるはずだ。
中国の景気減速は、構造的な減速と循環的な景気減速に加えて、米国の制裁が継続していることによるものだ。
米国が行っているのは単なる経済制裁ではない。その目的は、中国を覇権争いの座から引きずり下ろすことだ。中国は民間企業も活用して、軍事力のハイテク化を進めている。それゆえ、米国は知的財産権の保護や、技術の強制移転の停止を米国が中国に強く求めている。米国市場への上場の停止や買収に関する制限などもその一環であろう。
繰り返しになるが、今回の制裁はただの経済制裁ではない。米中のどちらかが音を上げるまで続くと考えるべきであり、中国の景気にとっては明確にマイナスとなる。
来年は米大統領選があるので、米中間の対立は一時的に弱まるだろう。だが、次期大統領が就任する2021年には再び深刻化する可能性があるので、景気の下振れリスクに注意すべきだろう。