人工知能(AI)を搭載した新たなツールの登場により、でっち上げにもかかわらず本物のようなニュース記事の作成が容易になってきた。同時にこうしたツールの悪用に対する懸念も強まっている。
動画の世界には、有名人が実際には行っていない発言や行動をしているような映像を作ることができる「ディープフェイク」という技術がある。ニュースの世界でも、AIを導入したツールを使えば同じようなことが可能で、地球が平らだとか、地球温暖化はでっち上げだとか、政治家が実際には起こしていない犯罪に関わったとかいうニュースを読者に信じ込ませることができる。偽のニュース記事が出回るのは今に始まったことではないが、AIを搭載したツールによって偽記事が数秒の間に自動生成できるようになった。
専門家が把握している範囲では、こうしたツールを使えるのは今のところ研究者だけで、悪意のある使われ方はされていない。また、この技術には偽記事がもっともらしく見えすぎないようにする制限が加えられている。
ただ、こうしたツールがさらに進歩すれば、偽情報を拡散したり、隠された政治的意図を助長したりする恐れがある。技術を開発した研究者の多くや、技術を詳しく検討した人々はそう懸念する。一部の研究者がコンピューターで生成されたニュース記事のリスクについて警鐘を鳴らし、偽物の可能性がある記事を検出できるツールを公開しているのはそのためだ。