だから、SNSで友達の投稿チェックをやめて関係が希薄になってしまうのは恐ろしいが、かといってSNS上の弱いつながりがリアルの友人関係のもたらす深い喜びに勝ることは基本的にないと言っていい。さらに言えば、人間はこれほど大量なつながりを維持できるようつくられていないのだ。

 加えて、ずっと孤独でいるのは人間には耐えがたいことだが、時として孤独な時間をつくるのも人生を豊かにするうえで必要だ。スマホは一人きりでゆっくりと考える時間を奪ってしまった。重大な問題に取り組むときは、情報のインプットも大切だが、情報を十分に咀嚼して自分の血肉に変えていく静かな思索も同じくらい意義がある。スマホを置いて出かけたり、散歩したり、大自然の中でぼんやりしたり……。ただ、あまりにも孤独が長すぎると自意識に潰されてしまうので、定期的に行うのがベストである。

人生における
深い充実感や楽しさを得るには

 デジタル・ミニマリズムを実行していくための概念を大雑把に見てきたが、本格的なメソッドは他にもたくさん記されている。どのようなデジタル・ライフにするかは各自の判断による。評者など、ツイッターを使っていなければこうしたレビューを書く機会はなかったので、見る時間は減らせそうだがやめることはできそうにない。自分の書いた記事へのリアクションも気にならないとは言えない。悩ましいところだ。

 とにかく確実に言えるのは、人生における深い充実感や楽しさは、スマホをいじっているだけでは手に入らず、現実世界での面倒くさいことや複雑な事柄と取っ組み合い、乗り越えた先にあるということだ。デジタルデバイスは便利だがあくまでも道具である。この道具を上手に使いたいが支配はされたくないと切に願うのであれば、本書は間違いなく最良の手助けになるだろう。

(HONZ 西野智紀)