「お金がなくて進学できない子どもに対する、給付型奨学金制度がせっかくできたのに」

 言葉を選びながら慎重に話す小河さんの声を聞きながら、私は心の中で「ぶち壊しじゃないか」と憤る。生活保護制度に設けられた進学支援を含め、どのような家庭に生まれ育った子どもにも、高校卒業以後の教育の機会を保障する日本に、まだまだ不完全すぎるけれども、少しずつ近づいてきていたはずだ。その蓄積も、木っ端微塵になるかもしれない。

 英語民間試験は、まるで「黒船」だ。しかも、日本の現政権と経済界の一部が、わざわざ呼び寄せつつある「黒船」だ。これは外患だろうか。それとも内乱だろうか。

そもそも手薄な
高校生活への支援

 小河さんが最も懸念しているのは、大学入試そのものよりも、高校時代を支える制度の手薄さだ。現在の日本では、高校進学率はほぼ100%となっている。高校進学しない子どもたち、中退する子どもたちという見えづらい課題も残っているが、数字の上では「ほぼ全員が進学」という状況だ。

 けれども、高校は義務教育ではない。小学生・中学生に対する経済的支援は、子どもが高校生になるとほぼなくなる。住民税非課税世帯を対象とした制度には、就学援助や児童手当がある。しかし中学を卒業すると、それらの経済的支援がなくなる。

 ひとり親世帯を対象とする児童扶養手当は、子どもが18歳になるまで受け取ることができる。しかし、ひとり親世帯の経済状況、特に母子世帯の深刻な貧困を考えると、「十分」とは言えないだろう。

「今の制度は、『高校はなんとか自分で頑張れ』というものです。『高校は自力で行きなさい、行けるでしょ?』という感覚です。でも、資格試験や大学入試のための模試の費用については、公的支援はありません。貧困世帯のお子さんは、そういうところでハンデを負いやすい状況が、今、すでにあります」(小河さん)