しかし、排水溝もそうだし草むしりもそうだが、やり終えた時の達成感はひとしおである。頭を悩ますタスクがひとつ片付いたこと、住まいがより良いものになったこと、それを自分たちの手で成し遂げたことなどが一挙に感じられ、大変晴れがましい。賃貸の物件でこれなのだから、もし持ち家なら愛着はより強かろうし、晴れがましさは比べるべくもないのであろうと想像している。

 なお、かねて個人的な夢であった猫様御用達の脱走防止網付きウッドデッキがようやく完成し、庭に設置した。猫はすこぶる気に入ったようで一度ウッドデッキに出るとなかなか帰ってこず、うれしい。先日の台風による被害で新たなるメンテ必要箇所がいくつか出てきているが、ウッドデッキの完成をもって引越し後のバタバタは一段落を見た次第である。

屋内は風が気持ちよく
夜は1日の疲れが気持ちよい

 リノベーション済み内装によって素晴らしいすみかに見えたわが家であったが、住んでみると怪しい部分がいくつも発見された。

 まず建て付けが、玄関から窓から全ておかしい。風が強い日は隙間風が女性の悲鳴のような音を上げている。風呂の扉は常に隙間風を許すので入浴中は寒く、玄関の扉はきちんと締めるのに3段階の手順を踏まなくてはならない。

 網戸の建て付けの悪さは極め付きで、動かす度に外れる。直そうと思ってもうまくいかず復旧に15分くらいかかることも珍しくなく、作業中はいよいよイライラしてきて「(家賃)5万円が!」という、自戒ともつかない悪態が口をついて出る。網戸の開け閉めに毎回15分かかることを想像してもられば大変なストレスだというのが伝わると思うが、それを含めての家賃5万円台であり、それを順当といっていい築年数である。

 あるひとつの窓が、動かすと建て付けの悪さからこれもまた女性の悲鳴のような音を鳴らすのだが、この音が祖父の家のガラスぶすまが立てていた音とまったく同じであり、懐かしさを誘うので気に入っている。

 あとこれは田舎暮らしとは関係なく、前のこの家の借り主がもたらした問題かと思われるが、我々が寝室に使っている洋室のドアのラッチ(壁に差し込む、ドアノブを動かすと出たり引っ込んだりする爪のような部分)が前後逆についていた。移り住んだ当初は「寝室のドアがどうやってもきちんと閉まらない」と首を傾げていたのだが、ラッチの誤設置を発見するに至り驚愕した。

 まさかこのドアを取り付けた最初の段階からこうだったのであろうか。単に施工業者の不手際かもしれないが、前の借り主があえてラッチを逆向きに取り付けたかもしれず、もしそうだとしたら何か闇の部分を垣間見たようでおそろしかった。後述するが、前の借主はいくつかのおそろしさをこの家に残していった。

 家の四方の窓を開けると、廊下を中心に風が通って非常に気持ちがいい。常にいいあんばいで風が通るのは周りに風をさえぎる建物がないためなのか、風が強い土地柄なのかはわからない。しかしこのおかげで真夏の夜、日によってはクーラーなしで過ごすことができる。

 これはコンクリートジャングルで生活していた頃には想像し得なかった体験である。都会は夜でも熱気がこもっているが、田舎では昼間の熱が引いて清涼な風を屋内に取り込むことができる。たまにどこからかやってきた肥料の匂いが家じゅうを席巻することがあるが、人間には匂いに慣れる嗅覚疲労なる都合よろしき能力も備わっているのでさほど気にならない。