介護と医療の政策で「予防」が舞台の中央に躍り出てきた。社会保障費の急増を何とか抑えようと政権はいろいろ策をめぐらしてきたが、うまくいかない。そこで昨今打ち出してきたキーワードが「予防」である。
国民が病気の予防に努めれば、医療や介護のサービスを受ける量が減り、医療保険と介護保険の総費用の伸びが縮減するという狙いである。併せて「健康寿命を延ばし、健康に働く方を増やすことで、社会保障の担い手を増やす」(経産省)ともくろむ。
認知症まで「予防」を目指す
政府の大綱素案に家族団体が猛反発
安倍内閣が長期的戦略を打ち出す未来投資会議での首相発言の軌跡を見ると明らかだ。2016年11月の同会議で「介護が要らない状態までの回復を目指す。パラダイムシフトを起こす」と首相が発言し、「自立支援・重度化防止」にかじを切った。
だが、今年3月の同会議では「介護予防については、介護インセンティブ交付金の抜本的強化」「集いの場の整備」を宣言した。要介護者の「回復」を目指す路線からもっと対象を広げ、要介護にならないように「予防」を前面に押し立てる。その手だてとして、地方自治体に「インセンティブ交付金」を配るという構図である。
ところが、その「予防」をめぐってひと騒動が起きたことは記憶に新しい。認知症施策である。認知症の基本施策は2015年に決めた「新オレンジプラン」だが、期限切れのため、それを引き継ぐ「認知症施策推進大綱」を制定することとした。官邸が主導し、5月16日に開いた「第3回認知症施策推進のための有識者会議」(鳥羽研二座長)に認知症大綱の素案を示した。
その中で目標値を「70歳代での発症を10年間で1歳遅らせる」とし、これを 有病率に置き換えた注釈として「10年間で相対的に約1割の低下となるので2025年度までの6年間で相対的に6%減らす」と明らかにした。予防を強化することで実現させるとしている。