介護保険制度は、再来年4月に第8期を迎える。制度改定に向けての給付と負担についての審議が社会保障審議会介護保険部会と同審議会介護給付費分科会で始まった。増え続ける利用者に対して財源が追い付かないのは必至。制度改変が予想されるが、もう一方で、地方自治体に対して保険者としての費用抑制が一段と強化されそうだ。
その第1弾として、現在の第7期の制度改定で新たに盛り込まれたのが「保険者機能強化推進交付金」である。別名「インセンティブ交付金」と呼ばれる。
高齢者の自立支援・重度化防止等に取り組み成果を上げた自治体に、国が努力に応じて交付金を渡す仕組みだ。目標を達成させるための刺激剤として特別に報奨金を出すので、「財政的インセンティブ」とも表現している。法的には、2017 年成立の改正介護保険法、「地域包括ケア強化法」で導入された。
自己評価が大半とはいえ、自治体の仕事に対して通信簿並みの点数を付けさせ、保険制度とは別枠のボーナスを支給する。お金で自治体を特定の方向に誘導しようというわけだ。当然ながら、この中央集権的手法に賛否が起きている。「地方分権の名が泣く」という声も出ている。
だが、実のところ、この制度はもう一つ大きな問題を抱えている。その前に、インセンティブ交付金の仕組みをおさらいしておこう。
介護の「予防」に積極的な自治体を優遇
インセンティブ交付金導入の経緯
2017年6月9日に閣議決定された骨太方針、「経済財政運営と改革の基本方針2017~人材への投資を通じた生産性向上~」にもインセンティブ交付金は以下のように記された。
「保険者機能の強化に向けた財政的インセンティブの付与の在り方について、地方関係者等の意見も踏まえつつ、改正介護保険法 に盛り込まれた交付金の在り方を検討し、早期に具体化を図るなど、自立支援・重度化防止に向けた取組を促進する」
「自立支援・重度化防止」がこの交付金の目的と改めて強調し、インセンティブの導入にも触れた。財源は介護保険でなく、全額税金である。約1700の市町村に総額190億円、都道府県には10億円の予算を組んで昨年度からスタートした。
ところが、昨今、社会保障費の膨張に悩む安倍政権は、医療と介護に「予防」の概念を持ち込み、施策の柱とし始める。高齢になっても「予防」に力を入れれば、いつまでも心身の健康は維持でき、医療保険や介護保険をすぐに頼らなくてもいいはず、と考えた。