優秀なチームはメンバーのIQを上回る
チームづくりの際にはバイアスに囚われてはいけないことを(そして誰もがバイアスを持っていることを)、私たちは早い時期にビルに教えられた。だがこれは彼にとってはあたりまえのことだった――勝利できるかどうかは、最高のチームを持てるかどうかにかかっていて、最高のチームには女性が多いのだ。
2010年の2つの研究が、ビルの考えを裏づけている。これらの研究はチームの「集合知」について調べた。なぜ一部のチームは個々のメンバーのIQの総和よりも「賢い」のか?
理由は3つある。第1に、最高のチームでは一人、二人が発言を独占せず、全員が議論に貢献する。第2に、そうしたチームのメンバーは複雑な感情を読むのがうまい。そして第3に……そうしたチームには女性が多い。このことは、女性が男性に比べて感情を判断するのがうまいことからも、ある程度説明がつく。
ビルはどんな要職にも女性を検討しろと、いつも私たちを促した。「どんなときも適任の女性は見つかる、ちょっと時間はかかるかもしれないが」。彼はできる限り女性の登用を支援した。2015年にグーグルのCFOになったルース・ポラットもその一人だ。
ビルはコーチする女性たちに、とくに人事や広報などの典型的に女性の多い分野以外の仕事で、より大きな職務と大きな損益責任を積極的に担え、とハッパをかけた。自分の知っている成功した女性リーダーを、ほかの女性リーダーに紹介した。ビジネスの話をするときはいかなる性差別も許さなかった。
彼はイヴ・バートンをインテュイットの取締役に招き、その後も彼女がメディアコングロマリット、ハーストの上級副社長と相談役の職務を果たすのを、さまざまなかたちで手伝った。彼女が交渉していたコンテンツ契約についても助言した。二人はコロンビア大学とスタンフォード大学のジャーナリズム&テクノロジー・パートナーシップにも協力した。
だがビルが何よりも力を注いでいたのが、ハーストラボだ。これはイヴがビルの提案と助言を受けてハーストで始めた、女性起業家のインキュベーターである。現在ハーストラボに在籍する企業の価値は、合計2億ドルを超える!
「あれがビルの後押しを受けてやった最後の仕事になった」とイヴは言う。「女性に会社の種をまく場所を与え、成功させるのが、彼の構想だった」