Dさん(41歳男性)の家庭では、共働きの夫婦では比較的取られがちなシステムが採用されているようである。

「『生活費や貯金などもろもろ含めた額を毎月夫婦の口座に振り込んで、余ったお金はそれぞれの自由にしていい』ということにしている。稼ぎは私の方が多いので、振込額を一定に定めると不公平感が生まれるから、給料に対してパーセンテージで毎月振込額を決定している。

 私の方が浪費癖があり、金銭感覚は妻と違うと思うが、少なくともこれまで金銭感覚の違いでもめたことはない」(Dさん)

 お互いの金銭感覚を阻害せず、ライフスタイルを尊重し合えるうまいやり方だが、しかしこのシステムではうまくいかない場合もある。

うまくいかないケース
相手の金銭感覚に共感しきれない

 Eさん(36歳男性)の家庭でもDさんと同様、夫婦の口座に毎月一定額を振り込むルールが採用されていた。余ったお金はそれぞれの自由である。

 結婚してしばらくはうまくいっているかに見えたが、しばしば妻の浪費が激しい月があり、Eさんに不信感が芽生え、徐々に大きくなっていった。

「妻が浪費した月は給料日まであと2週間あっても『明日は昼抜きで過ごそうかな』といったことを言うありさまだった。そのうちそういうことは言わなくなったので、私が嫌がっているのを感じ取ったのだと思う。

『給料に見合った生活をすればそんなに苦しむ必要はないのに。金銭感覚がかなり違うな』と感じる機会が徐々に多くなっていった。金額は定かではないがカードの支払いもかなりありそうな様子だった。『大丈夫なの?』と聞いても『全然大丈夫』という答えしか返ってこない」(Eさん)

 仮に大丈夫でなくてもおそらく妻は『大丈夫』としか答えられなかったはずだ。お互いが自立できていることが前提の“定額振り込みシステム”なので、妻は自立が危ぶまれるような弱みを夫であるEさんに見せたくない。

「半年ほど悶々としていたが、意を決して浪費についてただすことにした。『将来はどうするつもりなの?』という切り口で」

 Eさん夫婦は衝突した。妻の言い分は「将来について考えなければいけないタイミングがきたら自然とそうする。それくらいはわかっている」で、Eさんは「そんなに都合よく自分の性格を切り替えられるわけないし、将来に備えるなら今から始めても遅すぎるくらいだ」と主張した。

「話し合い、というにはお互いあまりにも感情的だったが、これが決定打となって妻とうまくいかなくなっていった。あれから1年、なんとなく結婚生活が続いているが、妻との間には常にギクシャクした空気が流れている」

 Eさんと妻のどちらが悪いかという話ではない。2人には金銭感覚の齟齬があり、そこのすり合わせがうまくいかなかったということである。