ヤクザのシノギというと、覚せい剤の密売やノミ行為を含めた賭博、管理売春、みかじめ料といった違法なものを想像するかもしれないが、金になるのであれば、サカナの密漁や(詳しくは『サカナとヤクザ』で)、お祭りで出店をだしているテキ屋など、自ら働くヤクザもいる。様々なものがシノギになっているのだ。私たちの知らないところで、ヤクザと社会はつながっているのである。オリンピックのスタジアム建設の現場や、人が集まりにくい原子力発電所の現場など、人出が必要なときに人を集め派遣するのもヤクザの仕事である。

 ところで、ヤクザが所属する暴力団というのは会社組織のようなものではないそうだ。ヤクザ一人ひとりは基本的に個人事業主なのである。個々で勝手に稼いで、組に上納金を納める。時には仲間と組んで稼ぐこともあるが、暴力団というのは“互助会”のようなものだと知って驚いた。

「ヤクザ」は放送禁止用語
「暴力団」が正式名称に

 ここまでヤクザという言葉を連呼してきたが、近頃は「ヤクザ」という言葉が放送禁止用語になっているらしい。ヤクザという言葉は江戸時代からあるものだが、警察が使い始めた「暴力団」がこれからは正式名称になるようだ。「暴力団」は大正時代から使われている言葉である。また名称でいうと「反社(反社会的勢力)」という言葉もあるが、そう呼ばれたくないヤクザが多いというのも興味深い。

「暴力団という名付けはけっこうである。なぜなら我々は暴力を基本としているから」その一方で、社会の役に立ちたいという気持ちはあるから「反社」という名は受け入れがたいと五代目山口組組長は語っている。

 暴力団排除条例によって衰退し、アングラ化しつつあるヤクザは、もしかすると令和の時代に消滅してしまうかもしれない。小説や映画の中で見るフィクションとしてのヤクザではなく、現実のヤクザがいま、何を考え、どう生きているのか?その答えがこの本の中にはある。あなたの生活しているすぐ近くにもヤクザはいるかもしれない。

(HONZ 田中大輔)