投資家にとって重要なのは
市場の維持コストの変化を正しく理解すること

 HFT業者が市場でどのような役割を果たしているのかについては諸説ある。筆者は、(1)出来高の見かけほど実質的な「流動性」の役には立っていないのだろうが、(2)利益があるからマーケットメイクに参加しており、市場の成り立ちに一定のプラスの役割「も」果たしている、というくらいに考えている。

 一般投資家の注文に対する「分業フロントランニング」にあっては、HFTは先回りした買い(売り)と反対売買を「割り込ませる」だけなので、取引コストを下げるという意味での「流動性の改善」に対してはむしろ逆行していて取引の出来高の数字ばかりがかさ上げされている。

 他方、上場投資信託(ETF)のマーケットメイクなどにあって、HFT業者が一定の役割を果たしていることも事実だろう。

 これまで売買手数料に支えられた証券会社が維持してきた市場取引が、「分業フロント・ランニング」の利益で一部賄われるようになる、という流れだと理解できよう。一般投資家が何らかの意味で市場の維持コストを払うことに変わりはない。ただし、コストを払う主体は変化している。

 トータルで改善しているのかどうかに関しては評価が難しい。HFT業者が参加する市場は「不気味だし、嫌いだけれども、トータルのコストは改善している」ということかもしれないし、帳尻は改善していないかもしれない。

 ただ、個々の投資家が状況を変えられるわけではない。投資家にできることは、変化を与件として正しく理解することと、コスト負担構造の変化にうまく対応することだろう。