だが、それから約10年後の2000年には韓国の「アイドル市場」ががらりと変わっていることに気づいた。完璧な容姿、プロの歌、プロの踊りが求められるようになったのだ。

 日本におけるアイドルは、今も昔も「未成熟」を核にしている。未成熟であるゆえに「ドジ」をしながらも一生懸命な姿勢をファンが応援するという構図だ。

 日本において欠点のないルックスで完璧なスタイルの「アイドル」は存在しない。それは「モデル」や「女優」など別カテゴリーのタレントに入れられてしまう。

 アイドル全盛期といわれる1980年代にはアイドルとして売れるためには、歌は下手なことが必要だとすらいわれた。日本のアイドルは出来上がったものではなく、可能性を売る商売なのである。

 それに対して、初期は日本的だった韓国人アイドル業界も、歌や踊りで完成度の高さを目指すようになっていた。その1つの頂点が2007年にデビューした「少女時代」だ。

 当時、私はソウルのカフェで韓国人の知り合いに初めて少女時代のことを教わった。

 カフェに置いてある雑誌のグラビアをめくり、「この中で誰が好きか」と聞かれた。私が初めて目にした少女時代は、メンバーみんな印象が似通っていて、日本のアイドルとずいぶん違っていた。

 私はその知人に「日本で好きな女性タレントはいるか」と聞くと、彼は「上戸彩だ」と答えた。そして、「上戸さんはすごくかわいいけど、背が低いから韓国では人気が出ないと思う」と付け加えた。私が韓国人アイドルに「完成度」が重要だと初めて気づいたのはその時である。

 その数年後に始まったのが、日本における韓国人少女グループのブームだった。

 だが、そこでは面白いことが起きた。日本で最も人気になったのは、韓国で圧倒的な人気を誇る少女時代ではなく、「格落ち」の「KARA」だったことだ。

 完成度の高いパフォーマンスを見せる少女時代より、未成熟さを持ち合わせ一生懸命さを表に出すKARAのほうが、日本人ファンには魅力的だったのだろう。