韓国はこれまで安保面では米国、経済面では中国を最重要国としてきたが、もし韓国がGSOMIAを破棄したならば、米国は韓国に対して、米国を取るのか中国を取るのか、より強く選択を迫ってきたであろう。そうなれば、ファーウェイ排除の問題など、経済面でも米国の圧力を受ける。中国にべったりと入り込んでいる韓国企業は重大な影響を被ることになる。

 文在寅大統領は、心情的には日韓よりも中朝に近い政治家である。

 それは外交部の組織体系にも現れている。外交部の東北アジア局から日本を除いて、その他のアジアと日本を一緒にしながら、中国だけ独立の局にしたのはその一例だ。ただ、中国側は、文在寅大統領に冷たかった。

 一昨年、文在寅大統領が中国を国賓訪問した際には、昼夜10回の食事機会のうち、中国要人が主催したのはわずか2回という冷遇を受けた。そもそも中国はTHAADの配備を巡り韓国に報復措置を取ってきている。中国は韓国を大事にしているわけではない。

 北朝鮮の金正恩委員長も、文大統領が自負する米朝の仲介者としての役割を否定しているばかりか、韓国に対しミサイル等で威嚇している。また、文政権の南北平和経済構想を無視するばかりでなく、金剛山の韓国側施設を撤去しようとしており、南北協力事業をも無視している。

 しかし、韓国のGSOMIA離脱で利益を受けるのは中朝であり、損害を受けるのは日米韓である。今後も韓国が中朝にすり寄っていけば、米国が黙っていない現実を認識したことだろう。

 また、トランプ大統領は、在韓米軍の駐留経費の韓国側負担を現行の10億ドルから、その5倍の50億ドルに引き上げることを重視している。今回、韓国の態度は米国からの信頼を失うことにつながった。GSOMIAを破棄すれば、米国の要求は一層高まり兼ねなかった。

韓国から外国人投資家が
逃げていく可能性も

 GSOMIA延長となっても、一安心するのはまだまだ早い。

 文大統領は昨年の平壌での南北首脳会談の際、北朝鮮と軍事合意を結んだ。それは38度線沿いの北朝鮮の火力を削減することなく、韓国が一方的に偵察飛行を中止し、北朝鮮の軍事的動向を把握できないようにする危険な行為である。国の安全保障を最優先すべき大統領が、北朝鮮との平和共存を唱え、北朝鮮の軍事力を削減することなく、韓国の国防力を弱める決断をしたのだ。

 外国人が投資する前提として、国の安全が担保されていることは最低条件である。戦争リスクのある国に投資する者などいない。

 南北首脳会談が開かれるようになり、北朝鮮の挑発行動は一時静かになった。しかし、ベトナムにおける米朝首脳会談以降、北朝鮮は短距離ミサイルを20発発射するなど挑発行動を復活している。さらに、それよりも根本的なことは、北朝鮮は核ミサイルの高度化を今も進めており、朝鮮半島有事の危険性が決してなくなってはいないことだ。GSOMIA延長となっても、外国人投資家にとって楽観できる状況ではない。

「文在寅という災厄」
「文在寅という災厄」 武藤正敏著、悟空出版刊

 同時に、日米との関係悪化は、投資家にとって韓国に対する信頼性を著しく損なうものでもある。現在はまだ、外国人投資家が逃避するような大きな流れはできていないが、一旦こうした流れが生じた時には大きなうねりとなるだろう。それでなくても文政権の理解しがたい経済政策により、外国人投資は大幅に減っている。

 GSOMIAをはじめとした日米韓の安全保障のほころびが、どのように韓国経済へ波及するかを総合的に見た場合、今回のGSOMIA延長で万全の体制に戻ったと考えるのは早計だ。

 日韓関係で、韓国が元徴用工の問題を真摯に解決しようとする姿勢が明らかになったら、その時こそ韓国も変わったと見ることができるだろう。