次に、取締役等に関する規律の見直し、これは今回の改正の中心であると言える。最大の問題点の一つである社外取締役関係の規定については、まず、社外取締役は投資家・投機家の代理人であり、彼らへの配当が彼らにとって適切になされているか、着実に増額されているか、彼らからして無駄なコストや事業はないかを監視する役割を担っている。その結果が、設備投資削減、賃金カット、非正規の増加、長期間をかけての研究開発等をせずに安易な企業買収や事業買収に走る風潮、さらにその結果としての地域経済の衰退、貧困化の進展等であるといえる。

 例えば、資本金10億円以上の企業で見てみると、この20年で経常利益は3倍強になっているが、従業員の平均給与も設備投資も微減、売上高はほぼ横ばいである。そして配当は6倍以上になっている。

 つまり、従業員給与や設備投資を減らして利益を出し、さらに配当に回しているということである。

 これの設置を義務化するというのは、投資家・投機家の代理人を必置にして、彼らの権限、発言力をさらに強めること、株主資本主義を強化することに他ならない。加えて、今回の改正では業務執行を社外取締役に委託することができるようにする規定も盛り込まれている。

 これについても投資家からの要請に基づくものであるようであり、これは明らかに、社外取締役に投資家・投機家の代理人として経営に関与せよというもの。条件として、「当該株式会社と取締役の利益が相反する状況にあるとき、その他取締役が当該株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうそれがあるとき」とあることからも明らかだ。

「株主資本主義」は
さらに強化される

 株主、すなわち投資家・投機家の言うことを聞かない、思いどおりにならない、そうしたときに自らの代理人たる社外取締役に業務執行を委託させて、経営(単なるコストカットと配当の増額や配当を増額させるための企業価値の向上等)を委託させるということであり、「株主資本主義」はさらに強化され、コストカットにあえぐ企業、賃金カットに困窮する労働者は増えることになるだろう。

 そもそも新たに設けられる第348条の2第3項には、「~委託された業務の執行は、第2条第15号イに規定する株式会社の業務の執行に該当しないものとする。」とされている。当該条項は、以下のとおりであり、これに該当しないとするというのは、業務執行を委託された場合については社外取締役としての定義から外すということ、つまりは社外取締役としては法律上は扱わないということであって、単なる法的な整合性を取るための規定であるが、逆に言えば業務執行を委託することを前提として社外取締役とし、同時に業務執行を委託することも不可能ではないので、投資家・投機家のより意にそう人間をこの地位に就けることも可能となる。

 要するに、間接的ではあるものの、投資家等の「やりたい放題」が可能となるということである。

会社法(抄)
第2条 (略)
 十五 社外取締役 株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。
 イ 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。