スマート農業への挑戦 その3
「未来の農業の姿」を実感させる実証プロジェクト

農林水産省

大規模な野菜栽培でも直面する単収減少を覆す「掛け算経営」

八幡平農業改良普及センター経営指導課
高橋昭喜課長

 スマート農業では、稲作に関する取り組みが多い。日本にとってコメは、食料安全保障の要だけに、ある意味で当然なのだが、野菜栽培などの畑作でもスマート農業は大きな力を発揮する。その一つが、岩手県岩手郡岩手町の農業法人アンドファームを実証経営体として岩手県などが取り組んでいる「中山間地域の土地利用型野菜輪作体系における省力性・生産性向上に向けたスマート農業技術一貫体系の実証」だ。

 実証プロジェクトでは自動操舵トラクター、ドローンによる農薬散布などの他に、ドローン撮影により作況を調べる「モニタリングシステム」、収穫物を人が運ぶ際の補助力となる「アシストスーツ」などが導入されている。その中で関係者が驚いているのが、自動操舵トラクターの位置精度の確かさと、それによる作業の正確さ、作業性の高さだ。

  • 自動操舵システム(長芋溝掘)***
  • 高速・高精度の畝内局所2段施肥作業***
  • 人の農作業を支える「アシストスーツ」***
  • 防除用マルチローター***

 トラクターの位置の誤差はわずかに2センチメートル。耕起や植え付けで得られた位置データは、その後の作業にも活用できる。実証プロジェクトではキャベツと大根、長芋の栽培でのスマート化の方策を探っているが、八幡平農業改良普及センター経営指導課の高橋昭喜課長は、次のようなシーンでスマート化の革新性を語る。

「長芋は、植えられた地点から真っすぐ地下に伸びていきますが、もし種芋が、数センチずつでも左右にブレながら植えられ成長すると、トラクターで収穫する際、標準位置からずれて植えられた芋は掘り起こし機に接触して傷んでしまいます。しかし2センチメートル以内という精度で植えられていれば、こうした心配はありません。大根も同様です」

 またキャベツでは、畝の表面に生えた雑草を除くのは人手によるところが大きかった。しかし2センチメートルの誤差は、これもまた効率化を可能にしたのである。トラクターの位置データに誤差が少ないと、農薬散布の際、畝・条の間にだけ正確に散布できる。このため、最小限の農薬で除草ができて、これまでの人手作業も不要になり、効率化できた。「さらにトラクターを利用した肥料散布でも、従来はムラがなく均一にまくために複数回の散布が必要でしたが、位置データが高精度のため、散布を1回で済ませられました」(高橋課長)。

 アンドファームの耕作地は約90ヘクタール、外国人研修生も含めて23人のスタッフを抱える岩手県では最大規模の農業法人だ。しかし畑作でも稲作の大規模化と同様に、耕作地の拡大は栽培管理でムラが出て単収が減るジレンマを生んでいる。そのジレンマに、アンドファームの三浦正美社長は「規模拡大しても1圃場当たりの単収が減らない掛け算の経営、掛け算の農業」を掲げて革新に挑んできた。その一つの答えがスマート農業だった。

アンドファーム
三浦正美社長

 高精度な位置情報システムにより植え付けから施肥、除草、病害虫防除などの作業精度と品質が増し、結果的に大規模経営においても野菜の品質が高く、単収も維持される「掛け算の経営」の糸口が見えてきている。

 岩手県農業普及技術課の菊地政洋総括課長は、「自動操舵トラクターの位置精度の高さは、山間地で起伏のある圃場が多い岩手県の農業には効果的です。耕起や施肥という基本部分を正確に行える道具として使い勝手が良く、畑以外に例えば畜産の牧草地にも向いています。自動操舵装置は、適応性のある既存のトラクターにも後付けできるので普及もしやすい」と語る。

岩手県農林水産部農業普及技術課
菊池政洋総括課長

 ドローン撮影による作況の把握と最適な収穫時期の決定法など、まだ課題はたくさんあるが、畑作におけるスマート農業でも大きな革新の可能性が見えてきている。

***画像提供/岩手県八幡平農業改良普及センター

 

 

 

 

 

 

●問い合わせ先
農林水産省 農林水産技術会議事務局
http://www.affrc.maff.go.jp/
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