米カンザス州ローレンスでバーを経営するダンテ・コロンボさんは、店で働くバーテンダーから2本で50ドル(約5500円)もするしょうゆを買うことを提案され、驚いた。
「とても高かった」。コロンボさんは当時を振り返ってこう話す。「彼はこれこそが本物のしょうゆだと言った」。日本の離島にある醸造所の木おけで醸成されたもので、味見をしたコロンボさんは「すぐに食欲がそそられた。そんなことは他の食べ物では経験したことがなかった」。
バーではその後、「Rhumami」という11ドルのカクテルを発売した。マルガリータを凍らせ、グラスの縁に塩を載せる代わりに中に「ヤマロク醤油」を6滴垂らしたものだ。
過去にはコーヒーやオリーブオイルが脚光を浴びたことがあったが、今度はしょうゆの番だ。日本で広く使われているこの地味な調味料が高級品へと姿を変え、高価なワインのように珍重されている。
木のたるで醸造するしょうゆは日本では何世紀も前から造られているが、舌の肥えた外国人の間で注目を集め始めたのはつい最近だ。それをきっかけに日本国内でも高級しょうゆ人気に火がついている。それが「スモーキー」であろうと「複雑」であろうと「まろやか」であろうと(都内のテイスティングができる専門店ではマニアがこうした言葉で味を表現している)、洗練された食通の間で尊敬を勝ち取りたければ、鉄のたるで醸成されていない方がいい。
米ワシントン州シアトル在住のネット通販会社で働くマーク・アトウッドさんは、以前は普通のしょうゆを購入していた。だが、職人仕込みのしょうゆについて小耳に挟み、ネットで1本22.99ドルする3.4オンス(約100グラム)入りのしょうゆを購入した。キッコーマンの5オンス入りのボトルは平均で約3ドルだ。
アトウッドさんにとって、そのしょうゆはそれまで使用していた安い商品よりもはるかに「複雑で風味が軽く、満足の行く味」だった。「外ですしを食べるときは、店で出されるしょうゆではなく、それを持参して使っている」