景気低迷下のロシアで
急増する家計の債務
景気低迷が続くロシアで家計の債務が急増している。直近2019年第2四半期の家計の借入金の対GDP比率は15.2%と、統計開始以来の過去最高水準を更新した。こうした状況を受けてロシアでは、思わぬ金利上昇などで家計が資金繰りに窮した場合、個人消費が悪化して景気が腰折れするリスクが意識されるようになっている。
家計の債務の内訳を見ると、まず住宅ローンが増加している。もっとも住宅ローンの増加は所得に余裕がある家計が中心であるため、それほど大きな問題ではない。一方で、深刻なのは短期の消費財ローンの急増だ。主な借り手は、景気低迷の長期化で所得の減少に喘ぐ低所得者層であると考えられている。
他国に比べると、ロシアの家計の債務の規模はまだそれほど大きくないが、足元の増加ピッチは速い。そもそもロシアで、銀行が本格的に個人向けローンの提供を始めたのは旧ソ連崩壊(1991年12月)後のことであり、歴史もまだ浅い。そして政府系銀行の存在感が大きいロシアの場合、与信管理が適切とは考えにくい。
原油市況の低迷と欧米からの経済制裁を受けて、ロシア景気は低迷が続いている。さらにプーチン政権が財政再建を優先し、付加価値税率や年金支給年齢を引き上げるなどしたため、家計の所得は減少している。そのため収入に余裕がない世帯は、日々の消費を回すために個人向けローンの借入を増やしている。
ロシアの家計債務問題に
拍車をかけた金融緩和
加えて、家計による借入の増加を促しているのが、通貨の安定を受けたロシア中銀による利下げだ。ロシアの通貨ルーブルは、ロシアのクリミア侵攻(2014年2月~現在)に端を発した欧米からの経済制裁に加えて、14年後半に進んだ世界的な原油安を受けて大暴落した。そのためロシア中銀は通貨防衛を目的に、金利を大幅に引き上げた。