30年前の11月、ベルリンの壁が崩壊した。その時、歴史の終わりを予想した専門家は少なくなかった。共産主義は死に絶え、民主主義が勝利を収めた――。今や米国の力が世界を作りかえ、世界はやがてアメリカのようになる。よく知られているようにジョージ・H・W・ブッシュ氏はこれを「開かれた国境、開かれた貿易(中略)オープンマインド」を基盤にした「新世界秩序」と呼んだ。国際平和と調和の新たな時代であり、すべては米国の努力によって成し遂げられるとブッシュ氏は言った。だが歴史は終わることを拒んだ。ロシアと中国は自国の政策を露骨に追求し、世界のあちらこちらで宿敵同士が火花を散らすことになった。だが何一つとして、米国の政策立案者たちに新たな世界秩序の追求を思いとどまらせるものはなかった。あれから長い年月が流れ、米国民はその結果もたらされた世界の中で生きている。すなわち、米国史上最長の戦争となったアフガニスタンでの駐留、数兆ドルもの資金がつぎこまれた挙げ句失敗に終わった国家の建設、米国内の疲弊と目的を欠いた諸外国での活動、そして再び危険になった世界。