欧州の政策当局者たちの学習能力の無さがまた露呈した。

 スペインの10年物国債利回りは7月20日以降、連日危険水域とされる7%を超えた。25日には一時7.7%を上回った。6月中旬に7%を超えた時と違い、同日には2年物の利回りも一時7%を上回った。期間の短い国債の利回りと期間が長い国債の利回りとの差が縮小していることは、それだけ投資家がスペイン政府の信用状態を懸念していることを表す。短い期間の国債の利回り上昇は資金繰りを一層厳しくする。 

 6月28日と29日のEUの首脳会議で、スペインの銀行への1000万ユーロの支援、EFSF(欧州安定化基金)、ESM(欧州安定メカニズム)から銀行への直接資本注入や国債買い入れなどで合意した。この合意の効力は一月ももたなかった。それはなぜか。

 合意は即効性に乏しかった。銀行への支援額が確定するのは、資産査定が確定する9月以降。銀行への直接資本注入は、ユーロ圏で一元的な監督機関が設立された後の話で、設立については現時点では全くメドが立っていない。ESMも本格稼働はドイツの憲法裁判所が合憲か違憲かの判断を下す9月12日以降となる。

 直接資本注入できなければ、銀行への支援額はそのまま、スペイン政府の債務残高に上乗せされる。ESMが稼働しなければ、利回り抑制や財政の資金繰り支援のための国債購入枠はEFSFの2500億ユーロ強のみとなる。

 ここに、バレンシア州の中央政府への財政支援要請が加わったことで、スペイン国債は市場の標的となった。