サイバートラックテスラの新型電動トラック「サイバートラック」を披露するマスクCEO(11月21日) Photo:Reuters

――筆者のサム・ウォーカーはウォール・ストリート・ジャーナルの元記者・編集者。著書に「常勝キャプテンの法則――スポーツに学ぶ最強のリーダー(The Captain Class: A New Theory of Leadership)」がある

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 11月21日にロサンゼルスで開かれたイベントは、スモークとレーザー光線、立ち上る炎と共に幕を開けた。そして未来的な電動トラックが舞台に姿を現した。鋭いアングル、フラットな鉄製のパネル、邪悪な外観を備えた悪夢に登場しそうな車だ。

 「この世に二つとないデザインだ」。黒服に身を包んだテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はこう述べた。

 このばかげた壮大なショーのハイライトはその数分後に訪れた。テスラの設計責任者が頑丈さを証明しようと鉄のボールをトラックの窓に投げつけたところ、窓はひび割れてしまった。「何てこった」とマスク氏は声を上げた。

 テスラ株は翌日、6.1%急落した。

 この「サイバートラック」が一般に発売されたときには、こうしたことは全てどうでもよくなっている可能性はある。ただし、実際に発売されればの話だが。マスク氏は注文が殺到していることを示唆するツイートや、トラックのデザインを批判する人は想像力が欠如していると主張するツイートを投稿している。同氏は「誰もサイバートラックに*期待*していない」とツイートした。

 この車について明らかなことがある。最も大胆なのはそのスタイルではなく、考案や設計、発表の方法だということだ。これは時価総額600億ドル(約6兆5800億円)の上場企業に期待するような計算された戦略的な動きではない。基本的に直感にのっとった無謀な賭けだ。

 マスク氏はサイバートラック公開の2週間前にあたる11月5日、米空軍がサンフランシスコで開いたIT(情報技術)関連イベントのインタビューで、このプロジェクトについて語った。その際、テスラの市場調査手法について次のように述べた。

 「私は市場調査を一切しない」

 この発言について少し考えてみよう。トラック市場は米自動車業界で最も競争が激しく、従来最も採算性の高い市場だ。その市場に参入を狙った全くの新製品の公開を間近に控えて、テスラのCEOは潜在顧客を調べる必要性はないと言ったのだ。