世界28の言語で翻訳された全仏ベストセラーシリーズ最新刊の日本語版『猫は気まぐれに幸せをくれる』が刊行されました。
寝たいだけ寝て、暇さえあれば物思いにふけり、嫌いな奴が来たら姿をくらませる。飼い主をたっぷり困らせたかと思うと、欲しいものがある時だけ従順なフリをして、実は猫のほうが飼い主を選んでいる……15年間、どんな時でもそばにいてくれた愛猫に教わった、もっと楽しく快適に生きる秘訣を『猫は気まぐれに幸せをくれる』から一部抜粋・再編集してお送りします。

猫はただの猫にあらず

私が「猫はただのペットではない」と断言したい訳©ぱるぱーる

「猫があなたについて知っているほどには
 あなたが猫のことを知ることなんてできないだろう」
――ミシェル・ド・モンテーニュ(思想家)

 学校を卒業して何年か後、私は田舎の小さな家で2匹の猫を飼い始めた。
 ジギーとシャン、仲のよい兄妹猫だった。

 ふりかえると、駆け出しの作家として四苦八苦しながらペンをとる私と一緒にいてくれたのは、友人のほかに誰だったろう。
 もち込んだ原稿を一蹴された時に一緒にいてくれたのは誰?
 職場でリストラにあってお金に苦労した時に一緒にいてくれたのは?
 請求書や督促状がたまっていくにつれて冷蔵庫の中が空っぽになっていった時、誰がそこにいて私を支えてくれただろう。
 もうこれ以上悪いことなんか起きるはずがないと思っていた矢先に恋人から別れを告げられた時も、変わらずそこにいてくれたのは誰?

 猫たちはいつも裏切らずにいてくれた。

 ジギーとシャンはそのまなざしにいっぱいの優しさをたたえて、
「言葉で言ったってしょうがない、行動することだ。しかし行動するだけでもいけない、大事なのはそれを続けることなのだから。私たちはいつも一緒だよ」
 とささやいてくれた。

 猫が私たち人間の生活にもたらしてくれるものは、ひとつきりではない。
 分かち合いであり、ハーモニーであり、生活のすべてだと言ってもいい。
 猫は生活の中で細やかで出しゃばらないから、近くにいるのかどうかもわからないことが多い。
 しかし、ひと時もあなたのもとを離れたりしないで、そこにいるのだ。