愛するペットの主治医は、どのようなことに注意して選べばいいのだろう。1つ頭に入れておくべきは、獣医の技量は、人間を診る医師以上に差があるということだ。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
平凡でもいいが
ヤブでは困るのだ
昔から「遠くの親戚より近くの他人」という。いざというときには、疎遠にしている遠くの親戚より、交流がある近くの他人のほうが頼りになるという意味だが、これにならって首都圏在住のA子さん(45歳)はかつて、小児科医は「遠くの名医より近くの平凡医」と思っていた。
なぜなら子どもがしょっちゅう病気をする。だからさっと連れていけて、すぐに診てもらえる、平凡な医師が一番と考えていたのだ。
だがそれは間違いだった。
あるとき、咳が長引いていた長男(当時生後5ヵ月)の様子が明らかにおかしい。受診させると、医師は「ぐったりしているのではなく、落ち着いているだけ」と言う。「呼吸が苦しそうなので、検査してください」と食い下がったが、「そんなのムダですよ」と鼻で笑われた。相手にされないまま帰され、そのわずか1時間後、長男は40度を超える熱を出し、痙攣(けいれん)を起こして救急搬送。肺炎だった。
A子さんは、近くにあること最優先で小児科を選んでいたことを悔いた。近くて、平凡なのはいいが、ヤブでは困るのだ。
赤ちゃんは、自分がどれほど具合が悪いか説明できないし、急変しやすい。だからこそ、小児科医は注意深く診察し、異常を見逃さないでほしい。
A子さんはその後、隣駅にある、名医と評判の小児科を受診し、医師としてのレベルの違いに驚いた。予約しても3時間待ちの混み具合だったが、診察は丁寧で的確、内科系だけでなく目、耳、鼻も診てくれたし、重病は見逃さず、大学病院につないでくれた。
(小児科医は、近くのヤブより、ちょっと遠くても名医じゃないと!)とA子さんは強く思った。