即座の撤回は
「負け」イメージがつく

 まず、本の撤去や謝罪で「中国の抗議に屈したアパホテル」というイメージがついて、一部の日本人愛国者の方たちからバッシングを受けるというリスクがある。中国人観光客という「上客」のためには、思想信条をコロッと変える「媚中ホテル」なんてネガティブキャンペーンにさらされてしまうかもしれない。

 だが、それよりもはるかに大きなマイナスは、中国に頭を下げることで、元谷会長のカリスマ性にケチがつくということである。

 33%という、ホテル業界においてダントツに高い驚異の利益率を叩き出すアパホテルがここまで成長できたのは、元谷会長の「異能」ともいうべき経営センスによるところが大きい。そんな経営の柱が、中国人観光客離れを恐れて、自身の政治信条を抑えて頭を下げたり、著作を引っ込めたらどうか。

「なんだ、特に信念があってやっていたわけじゃないのね」と、元谷会長には「負け」のイメージがつきまとい、それがボディブローのように、じわじわと企業のブランドイメージにも悪影響を及ぼすかもしれないのだ。

 このあたりのリスクは、組織の理念、サービスや製品の根幹にある精神などに関わるようなものが炎上した際も同様である。「迅速な撤回と謝罪」をすれば炎上は鎮火できるが、それと引き換えに、企業や経営者のイメージ悪化、昔からのファン離れ、ブランド力の低下など、数字では測れぬ損失を招くことになるのだ。

(2)の「批判覚悟の取り組みをしている場合」というのは、2017年の宮城県のPR動画を思い出していただくといいかもしれない。

 動画に出演しているタレントの壇蜜さんの扱い方が、ベタベタな昭和のお色気路線だったことで、県の事業なのに性的で不愉快、女性蔑視だと批判が殺到した。

 しかし、村井嘉浩・宮城県知事は「迅速な撤回と謝罪」はしなかった。7月5日に配信後、批判が殺到しても継続して、翌8月26日まで流し続けた。当初予定していたキャンペーン期間を1カ月残したとはいえ、かなり粘った方である。