個人顧客に向き合った「お客様ニーズ対応」

 「お客様の役に立ちたい」。

 こう決意した私に、お客様の求めに対応して成功する経験が訪れます。「週末にマイホーム購入者の不動産契約に成功したら、住宅ローンを紹介してください」と不動産業者を訪問しました。

 当時は住宅ローンの専門部署(ローンセンター)もまだない時期で他の金融機関もそんな営業はしていません。「銀行が来た」と不動産業者から驚かれ、歓迎してもらいました。そして住宅ローン新規残高が激増したのです。

個人のためを追求した「お客様想いのPB(プライベート・バンク)を」

 私は、次に社内掲示板で「プライベート・バンク構想」を提案しました。一言でいえば、富裕層のお客様が求めるニーズに長期で取り組むサービス提案です。 

 一例ではノルマをなくす、転勤せず長期で遺言などにも対応するといった内容でした。すると驚くことに当時の頭取からメールが届きました。「面白いから担当役員に話しておく」となり、テストケースを担うことになったのです。

 当時バブル崩壊後に不良債権が発生し、銀行は不動産融資をストップしていました。その結果、融資が受けられずビル建築ができなかった富裕層のニーズに対応する必要があったのです。この対応は大成功し、後に資産家向け担当者が全店展開されることになりました。

 「ノルマはお客様のためにならない」「お客様のためを思い、お客様ニーズに対応することはいずれ実を結ぶ」と信じ続けた結果です。

 その後、私は、米系の世界的証券会社のプライベート・バンクに出向という、願ってもないチャンスをもらいました。そこでは世界の最先端の金融商品、金融工学に触れ、日本の金融機関にはない、優れたノウハウに触れる刺激的な日々でした。