発行部数が98万部(シリーズ累計136万部)になり、いよいよ100万部に届きそうベストセラー『伝え方が9割』。本の中に書かれていることは、実際どのくらい効果があるのでしょうか?今回、街で実践してみて効果のほどを確かめるべく、立教大学の郭洋春総長が指導するゼミ(現在は深澤光樹兼任講師が代行)による、検証実験が行われました。 (構成/藤榮卓人)
伝え方の技術「選択の自由」
『伝え方が9割』は、私、佐々木圭一が膨大な時間とトライ&エラーから導き出した、コトバの方法論をまとめたビジネス書です。
今回検証するのは、伝え方の技術「選択の自由」。
2つ以上の選択肢を並べることで、相手が前向きに行動できるようにする技術です。
たとえばあなたがレストランのウェイターだとして、デザートの注文をふやしたいとき。
食事の終わりかけに、
「デザートはいかがですか?」
と聞かれると、甘党の人は頼むかもしれません。でもそうでない人は聞き流してしまうでしょう。そんなとき、
「デザートはマンゴープリンか、抹茶アイスがあります。どちらかいかがですか?」
こう聞かれると、「どちらかというなら…マンゴープリン!」と思わず選んでしまいたくなりそうです。
「AかBどっち?」と言われると、人はどちらかを選んでくれる可能性が高まるという技術を『伝え方が9割』では紹介しました。
感覚的にはわかると思いますが、実際に効果はあるのでしょうか?
今回も検証実験を行うのは、立教大学経済学部の郭・深澤ゼミに所属する学生たち。郭洋春総長から直々に経済学をまなぶ彼らに、調査してもらいました。
「アンケートにご協力お願いします」では素通りしていた人に、伝え方を変えたら・・・?
こちらの実験は、立教大学のキャンパスにて行われました。歩いている人に話しかけても、素通りされて当たり前のアンケート調査。普通なら、
「アンケートにご協力お願いします」
と言う場面ですが、伝え方の技術「選択の自由」を使うと、こうなります。
「1分アンケートか5分アンケート、どちらか答えていただけませんか?」
なお、いずれの場合でも、言い終わるまえに通りすぎてしまわないよう、相手に話しかける間は並んで歩く「居酒屋のキャッチの人スタイル」を採りました。
結果は、こちら。
<アンケートに協力した人数>
・伝え方の技術なし
130人/1,000人
・伝え方の技術あり
184人/1,000人
伝え方の技術ありのほうが、実に、
約1.4倍の人がアンケートに協力した
という結果になりました。
実験を行った学生も、
「伝え方を変えたら、下を向いて歩き去る人が減った」
「1分ならやってもいいよ、と言ってもらえた」
「協力してくれなくても、無視ではなく何らかのリアクションを返してくれるので、心のダメージが少なかった」
と、効果を感じたようです。
また、学生たちを指導する立教大学の郭洋春総長は、
「『する、しない』という『all or nothing』ではなく、『1分アンケートか、5分アンケートか』という『A or B』の伝え方が、人の心を動かす極めて有力な方法であると分かった」
と考察しています。
「選択の自由」は、ビジネスの現場でも有効です。たとえば、忙しい仕事相手に
「明日お時間いただけますか?」
と聞くより、
「水曜日か金曜日、どちらかお時間いただけますか?」
と聞いたほうが、相手も「どちらかというと金曜日がいいかな」と選びやすくなりますよね。