小説、マンガ、イラスト、デザイン、音楽――。ちまたにあふれる芸術と、それを生み出すアーティストの人々のなかで、絶対に犯してはならない共通の禁忌が「盗作」だ。しかし、いまいち定義するのが難しい芸術の著作権の定義はどこにあるのか?(清談社 ジョージ山田)
パクリの定義は
意外に難しい
オリンピックのロゴデザインから始まり、数々の作品の盗作疑惑で炎上した「サノケン」こと佐野研二郎氏しかり、有名クリエイターの盗作は時に大きな話題となる。特に最近はSNSで誰もが指摘できる環境が整ったことで、「パクリ」はより簡単に表面化する時代になったのではないだろうか。
たとえば今年4月“美人すぎる銭湯絵師”として注目を集めていた勝海麻衣さんがイベントで描いた2頭のトラが、2012年にイラストレーターの猫将軍氏が描いた作品に酷似していると指摘されたケース。ツイッターを中心に勝海さんの盗作が拡散、さらに過去作品の盗作疑惑や、数々のパクツイ(他人のTwitter投稿を、さも自分の発言であるかのように投稿すること)などが掘り返されたことは記憶に新しい。
国外では今年7月、アメリカの人気歌姫ケイティ・ペリーが2013年に発表した楽曲 “Dark Horse”がフレイムによるラップ“Joyful Noise”を盗作したという判決が下され、損害賠償として同曲の共作者らと共に278万ドル(約2億9700万円)を支払うよう命じられている。ケイティらは「権利侵害はない」として、この結果を不服としている。
そもそもオマージュか、インスパイアか、はたまた完全なパクリなのか、境界線が曖昧な芸術の著作権。著作権侵害か否かを判断するためには、いくつかポイントがあると、弁護士の川口洸太朗氏は説明する。
「ひとつは、そもそも作品が本当に似ているのか?という類似性。類似性が高ければ高いほど“パクリ”濃度も増します。ふたつめに制作者は元作品の存在を知っていたか、見聞きしたことがあったかという依拠性。最後に、そもそも元の作品が著作権のある著作物に当たるのかどうか、という点です。もし、元の作品が著作物であれば、それを自分の作品であるかのように発表することは、著作権侵害に当たります」
とはいえ、芸術という多様性が認められている分野では、パクリか否かの判断は非常に難しいと言わざるを得ないようだ。