「空手だけ、ゲームだけ」の人間になるな

 先生は空手の世界でしか通用しないことを嫌います。いくら組手が強くても、それを笠に着ていばったり他の道場生をいたぶることは絶対に許しません。常々「空手しか知らないバカになるなよ、世間でちゃんと通用する人間になりなさいよ」と口にしています。

 先生は若いころに職人の世界で仕事をして、早くに独立し自力で世間を泳いできました。実力の世界とはいっても世間はそれだけで回るほど単純じゃない。それをわかっているのだと思います。
 ちょっとした常識を知らないと、それだけで相手にしてもらえないこともある。世間知らずの僕に、「ゲームだけしか知らないバカではダメだよ。おまえが笑われると、ゲーム全体がそう見られるんだぞ」と話してくれました。

 物事は四角四面に取り組むだけではうまくいきません。かつての僕の対戦のやり方には柔軟性や自由度、臨機応変といった感覚が欠けていました。「空手道 光遊会」の「遊」という一文字には「遊びを忘れるな」という意味があるのだそうです。僕なりに感じるところは少なくありません。

  一見理不尽なことを投げかけられたとき、感情的に反応せずに自分の頭で考える。先生のおかげで、日常においてもゲームにおいても、「何か方法がないか」と自然に考える癖が少しずつついてきました。空手からはフィジカルだけでなく、精神面で教えてもらうことがたくさんあるのです。