生活保護の人々からなけなしの健康を奪う「医療券」のカラクリ生活保護受給者を救うために考案された「医療券」が、逆に受給者を治療から遠ざけてしまう現在がある(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「市販品類似薬」を健保から外す動き
実現すれば生活保護家庭に大打撃

 来年度から「市販薬類似薬」を公的健康保険の対象外とする検討が、政府で行われている。同様の検討は、過去数回行われては立ち消えとなっている。今回も立ち消えになるかもしれないが、現実化する可能性もある。

 もしも現実になると、生活保護で暮らす人々にとっては、特に大きな打撃だ。公的健康保険でカバーされなくなると、生活保護でもカバーされなくなる。街の薬局で医薬品を購入する費用は、健康で文化的な「最低限度」の生活費から捻出され、生活は「最低限度」以下になる。

 費用が捻出できず購入できないと、病気の症状を放置することになる。いずれにしても、「最低限度」のはずの生活から何かが削られる。とはいえ、「医療が無料だから、不要な診察や検査や医薬品を欲しがる生活保護の人々」という俗説は根強い。一部に実在しているのも確かだ。

 実際は、どうなのだろうか。生活保護のもとで暮らす2人のシングルマザーと、生活保護で暮らす人々の医療にあたる1人の開業医に尋ねてみた。

 大都市に住むシングルマザーのリンコさん(50代)は、次のように語る。

「そうなったら……ウチでは医薬品を買えなくなるでしょうね。病気を悪化させて、『どうしても、病院に行かなくては』というところまでガマンして、結果として医療費を増やすことになるだろうと思います」

 リンコさんの心身は、育った家庭環境や結婚後のDVの影響で、すでにボロボロだ。

 リンコさんが初めて生活保護を利用したのは、娘のマミさん(16歳)が生まれるときだった。当時、同居していた元夫は、朝から晩まで酒を飲み続け、家計に収入をもたらしていなかった。生まれてくるマミさんと幼少の兄姉たち、そしてリンコさん自身の命を守るために、他の選択肢はなかった。