国民健康保険料の引き上げは
本当に「仕方ない」のか
2019年10月30日、厚労省の社保審・医療保険部会は、2020年、国民健康保険料の課税限度額を3万円引き上げる方針を示した。国民健康保険料は、ある程度は所得に比例する仕組みとなっているが、「年間所得2000万円の世帯は、年間所得400万円の世帯の5倍」となるわけではなく、課税限度額という“天井”がある。
この“天井”を引き上げ、「高額所得者には所得に見合う国民健康保険料を払っていただきましょう」というのが、現在検討されている改定の趣旨だ。同時に、中間所得層の負担を軽減する措置も検討されている。
しかし、10月1日に消費税率が8%から10%へと引き上げられてから、1ヵ月も経っていない。正直なところ、「また?」と言いたくなるが、高齢化が進行する日本で、増大する医療費が国家財政の大きな負担になり続けているのは事実である。国民健康保険が破綻すると、必要なときに医療を受けることはできなくなるかもしれない。日本の国民皆保険制度と良好な医療アクセスは、世界に誇るべき日本社会の宝物、社会の健康を底支えする重要な土台だ。
現在は「社保完」の会社員も、退職後はいつか、国民健康保険または後期高齢者医療のお世話になる。国民健康保険を維持するために必要な負担なら、「痛いけれど、仕方ない」と受け入れるしかないのかもしれない。
しかし医療費の内訳や削減の仕方には、数多くの疑問を感じている。それは、「医療費が無料だからといって、ムダな医療を欲しがる生活保護の人々」という都市伝説にも通じている。