2017年度の社会保障財源のうちの地方負担分
国の財政と比較し、マクロ的に見る限り地方財政に余裕があるのは確かだが、厳しい財政状況に直面する自治体も増えてきている。この一つの象徴が、2019年4月に財政危機の宣言を行った新潟県だろう。
新潟県は、県の貯金に当たる「財源対策的基金」が21年度末にも枯渇する可能性を明らかにし、財政再建に取り組み始めている。新潟県の財政が危機的な状況に陥った主な原因は、借金返済である公債費の実負担増と、今後も増加が見込まれる社会保障関係経費や県立病院への繰出金の負担である。
地方の負担分である社会保障関係経費の推移をマクロ的に確認してみると、国立社会保障・人口問題研究所の「社会保障費用統計(平成29年度)」によれば、1970年度から17年度の社会保障給付費は直線的に増加し続けており、90年度に2.69兆円であった地方負担分は17年度に16.61兆円に膨張している。
年金・医療・介護などの社会保障給付費のうち、地方財政を最も圧迫するのは医療関係の負担分。特に深刻なのが公立病院の赤字拡大で、その裏側で進行する自治体の補填である。総務省「地方公営企業決算状況調査」によると、13年から17年において、公立病院の繰入金は年間8000億円程度だ。
このような状況の中、改革に向けた検討の参考情報として、厚生労働省が19年9月の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で公表したのが「公立・公的医療機関等の診療実績データの分析結果」だ。この分析結果によると、公立病院・公的病院の25%超に相当する全国424の病院が、診療実績が少なく、非効率な状況であり、再編統合の検討が必要であることを示唆している。
この424再編リストは、厚生労働省が強引な形で再編統合を促すものではない。重要なことは、地方財政にも限界がある中、必要な医療システムを堅持するため、この分析結果を参考に、政治や我々がどのような具体的対応を行うか冷静に検討することだ。この資料も利用しながら、医療施設の最適配置の実現と連携などについての議論を深めることが望まれる。
(法政大学経済学部教授 小黒一正)