オーストラリア人の中には土に埋める人もいる。スイス人はひょっとするとどこかに隠しているかもしれない。ドイツ人はおそらくしまい込んでいる。
中央銀行がかつてないペースで発行しているにもかかわらず、銀行券は地球上から消えているようだ。一体、紙幣はどこに行ったのか。そしてなぜ消えているのか。各国の中銀はその謎を解き明かそうとしている。
カード払いやスマートフォンのアプリを使った決済が人気となり、現金の出番が減っていることも考えると、なおさらわけが分からない。
米連邦準備制度理事会(FRB)によると、2018年末のドルの現金流通高は約1兆7000億ドル(約185兆円)で、2013年末の1兆2000億ドルから増加した。1ドル札の流通高は124億ドル、100ドル札は1兆3000億ドルだった。
FRBのエコノミスト、ルース・ジャドソン氏が2017年に発表した論文によると、2016年末にはドルの約60%、約9000億ドル相当が国外で保有されていた。100ドル札に限れば国外保有分は約75%に上る。特に金融システムの不安定化を経験した国では、米ドル札は経済混乱時の備えになるという。