多くの著名人から絶賛され、講演依頼も殺到している藤原和博氏の「100万人に1人の存在になる方法」。本連載では、そのノウハウが凝縮された藤原和博氏の最新刊『100万人に1人の存在になる方法ーー不透明な未来を生き延びるための人生戦略』の内容を抜粋しながら、未来への不安が一掃される絶対に食える「キャリアの必勝法」を紹介していく。

各界の著名人たちも大絶賛!不透明な未来でも「絶対に食える人」になれるキャリア戦略【藤原和博】Photo: Adobe Stock

 そもそも、読者のなかの多くの方々がサラリーマンや公務員になったのは、20代まで好きなものや興味が強烈に湧くものがなく、どこか中途半端だったからではないだろうか。

 僕自身もそうだった。

 「好き」で仕事を選べと言われても、それほど「好き」と宣言できることはなかったし、少年の頃からスポーツや芸術で突出した才能を発揮して、そのままサッカー選手やピアニストとして食っていく道は、初めから閉ざされていた。

 親が名のあるアスリートでも音楽家でもなかったからだ。

 かといって、小学生時代からプログラミングに親しんでIT系で突き抜けるようなタイプでもなかったし、学生起業家にもならなかった。

 また、能や歌舞伎のような芸能系の家業を継ぐ「運命の子」ではないし、継ぐべき店や会社や旅館を親が経営する家に育ったわけでもない。

 こうした中途半端な人たちが、働く日本人6700万人の大半ではないかと思う。

 この本は、この「中途半端さ」から、40代までに逃れるためのガイドである。

 現在はサラリーマンや公務員であっても、3つのキャリアのかけ算をして「キャリアの大三角形」を形成することで、あなたは100万人に1人の「希少性」ある人材に変態(メタモルフォーズ)することが可能だ。

 そのための方法を、10人の具体的な例を示しながら伝授する。

 サナギから蝶になって羽ばたくように、3つ目のキャリアで脱皮(ジャンプ)し、100万分の1という「オリンピックのメダリスト級」のレアな人材として稼げる道を示したいと思う。

 年間に100回を超える私の講演での反応を見ると、「20代で就く1つ目のキャリアで1万時間(5年から10年)夢中になって仕事をすれば、それが営業であっても経理であっても宣伝であっても、100人に1人の営業マン、経理マン、宣伝マンになれる」という話には説得力があるようだ。

 また、「2つ目のキャリアは、30代における会社や役所での異動かもしれないが、営業から営業企画でもいいし、経理から財務でも、宣伝から広報でもいいから、左の軸足が1万時間で定まったら、右の軸足を定めるつもりでやっぱり1万時間頑張れば、そこでも100人に1人の企画マン、財務マン、広報マンになれる。そうすれば、結果的にこの2つのキャリアのかけ算で、100分の1×100分の1=1万人に1人の希少性を確保することが可能だ」という話も同様に共感を呼んだ。

 ここまでで、ホップ、ステップまで進んだことになる。

 ところが難しいのは、この次のジャンプのやり方だ。

 「キャリアの大三角形」と名づけているように、底辺が決まったら(左と右の軸足が定まったら)、もしくは2つのキャリアのかけ算が完了したら、次にどこへジャンプするかがあなたの将来の付加価値を決める。

 三角形では、頂点が底辺から離れていて、「高さ」が高いほど面積が大きくなることは自明だ。

 この三角形の面積こそが、「希少性」の大きさを意味するのである。

 だから、面積を大きくして、あなたの「希少性」を高めるためには、できるだけ遠くへ飛ばなければならない。

 「高さ」を出すとはどういうことなのか?

 3つ目キャリアのかけ算で圧倒的な価値を生むためには、どんなふうにキャリアをつくっていけばいいのか?

 三歩目の飛び方がすべてを決めると言われても、具体的なイメージが湧かない……。

 そうした疑問が湧き起こってくるのは当然だ。

 そこで、この本では、読者に具体的な見本を示すために、100万人に1人の希少性を実際に達成した人たちMILLIONTH(ミリオンズ)10人を取り上げ、その一歩目、二歩目、三歩目のキャリアを示すことにした。

 まさに大三角形を形成する3つ目のキャリアのかけ算の妙が、10人の運命を拓いたのだ。

 すると次には、このような疑問が湧いてくるに違いない。

 彼にはどうしてそんな勇気があったんだろう?

 彼女はなぜそんな無謀な決断ができたのか?

 そもそも怖くはなかったんだろうか?

 結論を述べてしまおう。

 もちろん怖かったはずだ。それでも無謀にも見える彼らの三歩目のジャンプの背中を押したのには、3つの要因が重なっている。

 1つ目は、サラリーマンのままでいいんだろうかという強い疑問。これが20代、30代と高まって、やがて臨界点を超える。もちろん決断が早い人もいる。

 2つ目には、ようやく自分がどんなことなら夢中になれるのかが見えてくるのだ。

 平均寿命が40代だった明治期までなら20歳の成人までに取り組む仕事を決めるのは当然だった。でも100年の人生を生きる現代の若者なら、40歳くらいを成人とみなし、それまでに自分がライフワークとして取り組むテーマを決めればいいんじゃないかとも思えてくる。

 生きがい、生きがいと20代のうちから騒ぐのではなく、人生の半分までに2つ以上の稼げる技術を磨き(刃を研いでおいて)、40代以上から、それらを組みあわせて自分が本当に集中できる分野を見つければいい。それからでも、たっぷり50年はあるのだから。

 3つ目には、社会的な意義に裏打ちされた使命感である。なぜ、社会的な意義が高いほうがいいかというと、周囲の人々の関心が強ければ、エネルギーが注ぎ込まれるからだ。しかも、それが不利な勝負であればあるほど、実は社会の側が助けてくれるものなのである。

 あなたのチャレンジする姿が、味方を引き寄せる。

 それでも、細かく計算してしまえば、とても割があわないし、怖くなって実際は行動しないだろう。あまり計算せずに飛び込んでしまう「根拠のない自信」は、彼らに共通の資質であるように思う。

 だから、あなたも三歩目のジャンプは、あまり考えずに飛び込んでしまったほうが良い。

 その無謀さ、無邪気さ、きっぷの良さこそが、何となく続いた「中途半端さ」を脱皮する鍵になるから。