ボーイング737MAXPhoto:Reuters

 米航空機大手ボーイングは、同社製旅客機「737MAX」の2度の墜落事故(計346人死亡)を起こした。その後、事故をめぐる諸問題で苦境にあえいでいる。ボーイングの罪は簡単に許されるべきではないが、どんな米国企業もミスの代償を払わないと考える者は、同社が直面している試練に目を向けるべきだ。

 今年3月のエチオピア航空機の墜落事故以降、737MAXは運航を停止している。これに先立ち、2018年10月には、ライオンエア機が墜落していた。ワシントン州レントンの工場の外に多数の737MAXがあふれている状況下で、ボーイングは16日、規制当局による同機の安全性とソフトウエア改修に関する検査が続いている間は、同機の生産を停止すると発表した。

 ボーイングは第2四半期決算で、運航停止を強いられた顧客の航空会社への補償金として50億ドル(約5475億円)の特別損失を計上した。さらに、事故犠牲者の家族への賠償金として何億ドルもの支払いを強いられるのは確実だ。それと同時にボーイングは、ライバルであるエアバスに契約を奪われつつある。エアバスの今年の航空機引き渡し機数は、ボーイングの倍になるとみられる。ボーイングの評価面での長期的打撃を予想するのは難しい。

 さらにボーイングは、今後規制当局による新たな精査にさらされざるを得ない。米連邦航空局(FAA)は、ライオンエアの墜落事故の直後に737MAXの運航を停止させなかった。それは、事故原因とみられた飛行制御システム「MCAS」のソフトウエアの改修作業を進めている最中に、同機を運航させ続けても安全だとボーイングが説明したためだった。

 このシステムは、機体の側面にある「迎角センサー」が機首の上がり過ぎを示した場合に、機首を押し下げる。機体を設計した際、ボーイングはMCASが誤作動する可能性は低いと結論付けた。過去17年間に2億4000万時間を超える飛行時間があったものの、迎角センサーが警告を発した回数は27回にとどまっていたからだ。

 同社はまた、MCASについて操縦士に通知しなかった。「飛行安全性能に直接関係しない、ないし、乗組員の制御下にない情報および手順が含まれてはならない。基本的な飛行技術として受け入れられている一切の手順についても同様だ」とFAAの規則に書かれているからだ。ボーイングによれば、MCASは「バックグラウンド」で作動するものだったため、操縦士の直接の制御下になかった。