5年前に「ネットワーク千葉」と出合い、就労訓練としてまずコミュニティカフェで働きだした。次いで、有料老人ホームに移ったが、多人数の職場では居づらくなり、保育園に替わった。1日4時間、週3日の短時間就労の合間に、地域の食品工場での勤務にも精を出す。

「ネットワーク千葉」の事務局長、鈴木由美さんは「すぐに一般就労へとせかすのではなく、実習を重ねて徐々にステップアップしていく道筋を検討していくことが大切だと思う」と話す。本人に寄り添いながらの「伴走支援」である。

 ユニバーサル就労の考え方で特徴的なのは、業務の切り出しである。例えば、介護職員Cさんの業務内容を分解して、そのうちDさんの得意な掃除や食器洗いなどの業務を集め、「ユニバーサル就労」として別のラインを作る。そうすると、Cさんは入浴やトイレ介助など、高度な身体介護が必要な利用者へのケアを増やしたり、新たな相談業務も担えたりできる。

「風の村」では2006年からユニバーサル就労の下で受け入れをはじめ、これまでに約150人が現場で仕事に就いた。

富士市ではユニバーサル就労の条例も
51人が協力企業に就労

 こうしたユニバーサル就労に共鳴する自治体や事業者が次々現れてきた。

 静岡県富士市では、2014年11月に「ユニバーサル就労を拡げる親の会」が1万9000筆の署名を集めて、同市に提出した。加えて、2015年2月に、市議会議員の9割が加盟する「ユニバーサル就労推進議員連盟」が立ち上がった。同議連が「風の村」の池田理事長に会うなどして仕組みへの理解を深める。

 そして、議員発議によって、17年2月に全国初の「ユニバーサル就労の推進に関する条例」を制定した。議会が前面に出てユニバーサル就労に取り組むのは画期的なこと。同議連は、今では議会内で「ユニバーサル就労推進特別委員会」へと衣替えしている。

 条例は「風の村」の考え方を導入したが、受け皿となる就労の場を市内の企業とした点がユニークである。製紙、建設、食品、介護、小売りなど多くの職種にまたがる129もの会社やNPO法人が認定協力企業として登録した。

 条例の第6条で「事業者は、基本理念にのっとり、市が実施する施策に協力するよう努めるものとする」と「事業者の責務」を明確にしたことで、多くの企業を集めることが出来た。

 これらの協力企業への就労が決まった人は、9月までの2年半の間に合計51人に上った。やはり、引きこもりの家族を抱えた親からの相談が多いという。ハローワークを通じての一般就労につながった人は29人だ。