しかしながら自衛隊派遣後、事態がさらにエスカレートした場合、帰還のタイミングは極めて難しい。日本としては、中東情勢が想定外に危険になったなら帰還すべきだと考えるのは自然だが、米国にしてみればそれこそ「臆病風に吹かれた」と見え、同盟関係にひびが入る可能性が高いだろう。

 幸いにも、米国もイランも全面的な戦争状態を望んではいない。特に米国は仮に武力で勝ったとしても、イランを占領統治してレジームチェンジすることは不可能だと理解している。過去、イラクでもアフガニスタンでも不可能だった安定的な親米政権の樹立を、今の自国の体力でできるとは考えていない。

 恐らく米国とイランの対立は、小規模な武力攻撃やサイバー攻撃のような事態を続けながら長期化するだろう。長期化すれば第三国も巻き込まれやすく、事態はより複雑になると想定される。そして日本にとっても、外交的に慎重に立ち回る必要性が増す。

日本が最初にやるべきは
イランとの対話だ

 その場合、最初にやるべきはイランとの対話だ。安倍氏は現在の国際関係の中では、イランに対して軍事的な利害関係なくフラットに対話できる数少ない有力政治家だ。中東にはイランだけでなく、イスラエルやサウジアラビア、レバノンなどデリケートな国が多く、ある国の問題が連立方程式的に周辺の地域に広がりやすい。この地域で日本が立ち回ったところで、事態を根本的に解決できるわけではないが、イランにこれ以上事態をエスカレートさせることを思いとどまるよう促す姿勢は、当事者両国と国際社会から評価される。

 また日本だけでなく、世界経済全体にとって重要な原油の供給については、中国やインドなど大口の需要国と協調して、ホルムズ海峡のタンカー航行を保護するよう、国際連合(国連)の安全保障理事会での決議を求めることが有効だろう。