待望の新刊、『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』が発売5日目に重版し、3万部を突破。著作の合計部数も30万部を超えた北野唯我氏。いま、人材マーケット最注目の論客であり、実務家だ。
その北野氏が、今回選んだテーマは、「組織」。発売即、重版が決まった自身初の本格経営書「ウチの会社、何かがおかしい?」という誰もが一度は抱いたことがある疑問を科学的、構造的に分析し、鮮やかに答えを出している。
今回はオープンワークにためられたのべ840万人の現役・OB社員のクチコミを分析して、北野氏が発見した職場の満足度の条件について話を聞いた。業績を左右するソフト面(社員の相互尊重、風通しの良さ、社員の士気など)とハード面(待遇面や人材の長期育成など)でより重要なのはどちらなのか?
(聞き手・構成/樺山美夏)
「風通しが良い」と「仲良しグループ」は違う
――北野さんは、仕事で経営者に会うことも多いと思います。その際、「この会社、ヤバいな」、「この社長、建前だけの人だな」と感じることもあるのでしょうか。
感じますね。これまで数多くの経営者やトップランナーと話をしてきましたけど、早ければしゃべりはじめて3分くらいで「この経営者の会社で働くのはかなり大変そうだ」と思うこともあります。「こんな建前だけの社長に本音なんか言えないだろうな」って。特に、自分のことしか信じていない人は一瞬でわかりますね。そういう会社の業績を見ると、必ずと言っていいほどデータにも影響が出ています。
――ひと昔前に比べると少なくなりましたが、職場の風通しを良くするために社員旅行をする会社もあります。「社員は家族」と考えて、アットホームな会社を目指す経営者もいますが、そういう会社はオープネスが高いと言えるのでしょうか。
社員旅行で風通しを良くするというのは、前時代的なソリューション(解決法)だと思います。旅行するとなると、家族がいる人はもちろん、いない人も、個人的な調整が必要になりますよね。30年前だったら、「仕事第一、家庭二の次」と考える人が大半だったので、行かない選択肢はなかったかもしれません。でも、今はそういう時代じゃありませんから。
それともうひとつ言えるのは、オープネスが高い職場は、ただの仲良しグループじゃないということです。多くの人が、この点を勘違いしていますね。
社員旅行をすると人と人の距離が近づくので、確かに仲良くなるでしょう。でも意見を戦わせて衝突することはまずないですよね。本当の意味でオープネスが高い職場というのは、言いたいことを言い合って人とぶつかっても信頼関係を失わない、組織としての強さを持っています。
自分がやったことや言ったことを否定されることもあれば、他人の意見を明確に否定しなければならないこともある。そのやりとりを繰り返す中で、いい仕事は生まれます。ですから、そういう文化に慣れていない日本人にとって、オープネスを実現するのは厳しい面もあります。
「風通しがいい」というのは聞こえがいい言葉ですが、他人の意見に耳を傾ける優しさと、譲れない部分は闘う厳しさを両立させなければオープネスは高まらない。その風土を確立するまでは結構大変だと思います。僕は会社で言いたいことをズバズバ言うほうですが、それは周りに対する絶対的な信頼があるからできることなんですよね。