組織のボトルネックは「席順」だった

――『OPENNESS  職場の「空気」が結果を決める』の中でも、e-NPS(従業員満足度を示す指標)と相関係数が高いものには、「待遇面の良さ」や「人材の長期育成」といった職場の制度(ハード面)だけでなく、「風通しの良さ」、「社員の相互尊重」、「社員の士気」といった職場の空気(ソフト面)も条件に入っています。つまり、制度だけ整えてもオープネスが高まるわけではない、ということですね。

むしろ、ソフト面のほうが超重要なのに、今までおろそかにされてきているんですよね。以前、コンサルタントとして働いていた時に、ある会社をV字回復させるための戦略を立てたことがあったんです。あらゆる手を打たなければ、そう簡単には回復できない状況だったので、その会社に常駐しながら働いていたんですけど、しばらく職場環境を見ているうちに、答えがわかりました。「席順」が最悪だったんです。

よくあるケースですけど、事業間同士の衝突とか、連携がスムーズにいかないことが、その会社のボトルネックでした。でもフロアを見ると、いかにも偉そうな人が上座からバーッと順番に座っていて、オフィスも意味もなく分断されていて、明らかに空気が悪かったんですよ。ただ、当時はオープネスの概念もなかったですし、数千万円レベルの高いフィーを支払ってもらいながら、「席順を変えたほうがいいですよ」という提案も説得力に欠けるなと思って。

一応、先方の責任者に口頭でさらっと「席順を変えたほうがいいですよ」と伝えたら「はあ、そうですか」という反応しか返ってきませんでした。結局、席順はそのままでハード面の制度を変えたり、コストカットする方向で一時的になんとか利益は改善できたのですが、その後どうなったかは、推して知るべしでしょうね。