待望の新刊、『OPENNESS  職場の「空気」が結果を決める』が発売5日目に重版し、3万部を突破。著作の合計部数も30万部を超えた北野唯我氏。いま、人材マーケット最注目の論客であり、実務家だ。
その北野氏が、今回選んだテーマは、「組織」。発売即、重版が決まった自身初の本格経営書「ウチの会社、何かがおかしい?」という誰もが一度は抱いたことがある疑問を科学的、構造的に分析し、鮮やかに答えを出している。
なぜ、あなたの職場は今日も息苦しいのか。具体的に、何をすれば「オープネスが高い」組織がつくれるのか。明日、少しでも楽しく出社するために、一人ひとりができることは何か。本連載では、これらの疑問について、独自の理論とデータから解説する。

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 「勝ちグセのある組織と、負けグセのある組織の違いは何か?」

 皆さんはこの質問に、どう答えるでしょうか?
 世の中には、世代を超えても勝ち続け、成果を出し続けられる組織が存在します。一方で、負け続ける組織もあります。あるいは、その中間の組織、勝ったり負けたりする組織もあります。スポーツの世界で考えるなら、常勝軍団と言われるチームと、勝ち負けの差が激しいチーム、負けグセのあるチームがある。つまり、組織には次の3つのレベルがあるのです。

①負けがちな組織(弱い組織)
②勝ったり負けたりする組織(普通の組織)
③勝ち続けられる組織(強い組織)

 では、これらの違いは何でしょうか。

「当たり前のレベル」が違っている

 1つは、「組織の中での“当たり前”のレベルが違うこと」。具体的には、どのレベルの解像度で最善を定義するか、とも言い換えられます。

 たとえば、あなたが今、市場自体が130%成長を遂げている事業ドメインで、製品Aを販売していたとします。営業努力もあり、通年で140%成長を達成しました。驚異的な数字です。

 この際、負けがちな組織はこう考えます。
「自分たちの努力によってプラス40%成長した。やったぞ!」と。彼らはつかの間の勝利にどっぷり浸ってしまいます。

 次に、勝ったり負けたりする組織はこう考えます。
「市場成長で30%伸びて、自社努力によりプラス10%伸びた。波に乗れたぞ!」と。 つまり、30%は外部環境の影響であり、残りの10%は自分たちの実力だと冷静に分析できるのです。

 最後に、勝ちグセのある組織はこう考えます。
「市場成長で30%伸びて、自社努力で10%伸びたが、本当はもっと”成長余地”があって、さらにプラス5%伸ばすことができた」と。

 つまり、勝ち続ける組織とそれ以外の決定的な差は、「機会損失」にフォーカスを当てられるかどうかです。つまり、成果を分解した上で、もっとうまくできたのではないかと考えられる。たとえばトヨタがやっている「1%の改善」とは、別の言い方をすれば、「機会損失」を考えることなのです。

 整理すると、以下のようになります。
①負けがちな組織→「自分たちの実力」と「外部環境」を分けて考えない
②勝ったり負けたりの組織→「自分たちの実力」と「外部環境」を分けられる
③勝ちグセのある組織→「自分たちの実力」と「外部環境」を分けた上で、「機会損失」を考えられる

「組織の機会損失」は見えづらい

 機会損失の要因は、組織(またはプロセス)にあることが大半です。というのも、組織戦略における「機会損失」は、かなり見えづらいからです。

 「組織の機会損失」とは、具体的には次のようなことです。
・あるメイン事業で、エース社員が活躍しているが、実は他の部署に異動させるともっと高いパフォーマンスを出せた
・採用活動で、「きわめて頭がキレるが、なんとなく生意気な社員」を採用面接官の未熟さによって不合格としたが、3年後、競合他社でエース社員として活躍していた

 組織戦略の難しさは、「もっと良くできたかもしれないが、改善したときとしないときの差が見えにくいこと」にあります。

 たとえば、事業部Aで活躍しているエース人材がいたとします。その人材は、他の部員よりも圧倒的に高い成果を出している。これが事業の視点です。

 しかし、組織戦略の視点は少し違います。組織戦略は「そのエース人材は、実はもっと違う事業部に行ったほうが、さらに活躍できるかもしれない」という可能性で見ます。

 反対のケースもあります。今は事業部Aで成果を出していない人でも、実は何かの要因をちょっと変えるだけで爆発的に成果を出せるかもしれない、と考えるのです。こうした「機会損失」は、きわめて属人的で「目に見えにくい」のが難点です。

哲学的思想があるか、ないか

 そして組織戦略において、機会損失を最小化させるかさせないかは、「哲学的な思想」があるかないかによって決まります。具体的には「もっと高いところを探し、見つけようとする」人でない限り、その機会を見つけることはできない。より正確に言うならば、多くの人は「取りに行こうとさえしない」のです。

 スポーツの世界にたとえるとわかりやすいでしょう。 プロ野球選手になれるような才能のある人が、素振りなどの基礎練習をやるのは当たり前です。しかし、それ単体では、他の人と差は生まれません。その中で、もっと上を目指して、驚異的なまでの高みを目指すかは、もはやその人物の哲学的思想によって決まります。元大リーガーのイチロー選手をイメージすればわかりやすいですが、彼にはあきらかに哲学があります。

 これはサラリーマンも同じです。先に挙げたように、「組織的な失敗」は目に見えやすい。一方で、「組織的な成功」は目に見えづらい。そのため、哲学のない人にとっては、ただ単に「めんどくさくて自分からは取りに行きたくないリスク」なのです。

あなただけが知っている真実に投資する

 王道的な戦略というのは、”市場自体が成長している場合”には、最も有効で、最優先事項になりえます。なぜなら、仮に競合が同じことをやっていたとしても、自分も他人も両方ともwin-winになりえるからです。

 たとえば、競合が20%伸び、自社も20%伸びたということが起きます。ところが、市場がダウントレンドに入るタイミングでは、往々にして事業戦略だけでは機能しません。なぜなら、競合もまったく同じぐらい本気で、同じ戦略を打ってくるからです。

 ペイパルの創業者であるピーター・ティールは、「あなただけが知っている真実に投資する」と語ったことで有名です。勝ちグセの強化戦略はまさにこれです。

 詳しくは『OPENNESS  職場の「空気」が結果を決める』で述べていますが、機会損失が見えているかどうかは、「あなただけが知っている真実があるか」「それに前もって投資できるか」と同じだからです。この話がみなさんにとって少しでもインスピレーションになれば幸いです。