雇用市場景気循環的に好調な雇用市場はこのままいけば、人口動態面での暗い見通しに直面する Photo:Reuters

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

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 米国の雇用市場は予想を上回り続けている。毎月のように20万の新規雇用が生み出され、失業率はエコノミストが10年前に下限と考えていた水準をはるかに下回っている。

 最大の理由は、経済が多くの場合、景気後退(リセッション)で中断されるまで雇用を創造し続けることにある。現在の米国の景気拡大は10年を超え、最長記録を更新した。典型的なリセッションの誘因――インフレ率や金利の上昇もしくは金融バブル――がない状態が続くかぎり、雇用の創出は続くはずだ。

 それでも雇用市場もいつかは壁に直面する。労働力に加わる人間が足りなくなるからだ。実際、景気循環的に好調な雇用市場はこのままいけば、人口動態面での暗い見通しに直面する。雇用は予想を上回るペースで増えているが、人口増加のペースはそれよりも緩やかだ。昨年7月時点の米国の人口は3億2700万人で、2014年の国勢調査局の予測より210万人少なく、2008年の予測と比較すると780万人も少ない(今年の人口は今月末に発表される)。

 米国の出生率――女性1人が生涯に産むとされる子どもの推定数――は2007年には2.1だったが、2018年には過去最低の1.7に低下した。2010年から2018年までの出生数は国勢調査局の2008年の予測より300万人少なく、死亡数は17万1000人多かった。死亡率は人口の高齢化で既に上昇していたが、「絶望による死亡」――自殺や薬物の過剰摂取、アルコール関連の病気――がさらに押し上げている。

 人口が高齢化しても経済が行き詰まるわけではない。人口はドイツでは横ばいで推移し、日本では減少しているが、両国の失業率は米国より低い。しかし長期的には、雇用創出は生産年齢人口の制約を受ける。国際通貨基金(IMF)によるドイツと日本の長期成長率がそれぞれ1.3%と0.6%と、米国の1.9%を下回っているのはそのためだ。

 最新の雇用データにはこうした動向が表れている。労働省によると、11月までの1年間の就業者数は前年同期比で1.2%増えた。これは労働力人口、つまり就労者と求職者の伸び率(1%)を若干上回っており、その結果、失業率は低下した。同じように、労働力人口の伸び率は生産年齢人口の伸び率(0.6%)を上回っており、生産年齢人口に占める労働力人口の割合――労働参加率――は上昇した。