さらに、有力な輸出先である中国は、どう見ても文政権をまともに相手にしているようには見えない。これから文大統領は、いかにして経済を安定させ有権者の支持を得るか先行きは不透明感が増すばかりだ。

厳しい状況を迎える
韓国経済

 今回、日韓の首脳会談が実現した背景には、韓国経済がかなり厳しい状態にあることが大きく影響している。文政権は、何とかして日本から譲歩を引き出し、状況の打開を目指したいはずだ。

 中国経済の減速が鮮明化しており、韓国が対中輸出の増加によって景気回復を目指すことは難しくなっている。また、文政権が強引に最低賃金の引き上げや労働時間の短縮策を実施し、若年層を中心に所得・雇用環境は悪化してしまった。文政権は財政出動を強化する考えを示してはいるが、規制緩和など肝心の構造改革進展のめども立たない。

 12月に入り、米中が貿易摩擦の第一弾の休戦協定を結ぶことになったものの、韓国株が不安定に推移する場面が目立つ。特に、新興企業が多いコスダック市場は年初の株価水準を下回っている。その背景の一つの要因として、韓国の労働組合の動きが活発化していることは軽視できない。

 韓国最大手の企業であるサムスン電子では、初めて、全国組織に属す労働組合が結成された。また、自動車業界ではルノーサムスン自動車労組が賃上げを求めて6カ月ぶりにストライキを実施した。同社では生産の遅延やコスト増加への懸念が高まっている。

 景気減速の中で賃上げを求める動きがサムスン電子にも波及すれば、これまでのように経営陣が組織全体を統率し、業績の立て直しに迅速に取り組むことは難しくなるだろう。相対的に賃金水準が高いといわれるサムスン電子における労働争議の発生は、他企業における労働争議を更に激化させる要因になりかねない。そうした展開が鮮明化すれば、企業は韓国から急速に脱出するだろう。

 市場参加者の中には、左派の文政権が支持基盤である労働組合をなだめることは難しく、経済環境の悪化とともに労働争議が増え、韓国経済の体力が削がれると危惧するものもいる。そうした懸念は韓国株の戻りの遅さの一因とみる。

 経済の先行き懸念が高まる中、文氏は、日本に対話を呼びかけ、従来のように半導体材料などが調達できるようにしたかった。それは半導体輸出によって景気安定を実現してきた韓国にとって非常に重要だ。